「取扱説明書が読み解けない?」中学国語の正答率低下 AI時代に必須の「シン読解力」鍛えるには

AI要約

文部科学省が全国学力学習状況調査の中学校国語の平均正答率の大幅な低下を発表。

AIとDXの時代に求められる「シン読解力」とは何かについて国立情報学研究所教授の新井紀子教授に聞いた。

「シン読解力」を高めるためのトレーニング方法と大人でもトレーニングが可能かについて説明。

「取扱説明書が読み解けない?」中学国語の正答率低下 AI時代に必須の「シン読解力」鍛えるには

 文部科学省は7月29日、今年4月に実施した全国学力学習状況調査における中学校国語の平均正答率が前年度から11.7ポイント下がり58.4%だったと発表した。

 なぜここまで大きく正答率が下がったのか? そしてAIとDXの時代、子どもにも大人にも求められる「シン読解力」(新しい読解力)とは何か? 読解力を科学的に診断する「リーディングスキルテスト」を開発した国立情報学研究所教授の新井紀子教授に聞いた。

 2024年度全国学力学習状況調査の結果について、文科省・国立教育政策研究所は「自分の考えなどを記述することはできているが、必要な情報を取り出すことや表現の効果を考えて説明することに課題が見られた」と評価している。

 新井教授は「正答率が下がったのは、問題の難易度が去年より高かったというわけではない」と分析する。

 「去年から11ポイント下がったが大騒ぎすることではない。文部科学省は来年の共通テストの変更を見据えて特に大問1で今までにない『情報をしっかり読み解く力を試す問題』を出題したのだが、その正答率が今までの過去の問題に比べて低かった」

 新井教授はこの読解力を「シン読解力」と位置付け、現代社会に必須の力だと話す。

 「今はテクノロジーがどんどん新しくなり、AI活用はもちろん、急にテレワークが始まるなどの“変化”も起きた。そういう中で学校で習ってきた知識を暗記するだけでやり遂げられる社会ではなくなっている。日々新しく勉強しなければならないのだ。そして、リスキリングする際には学校に通うというよりは、情報や知識が書かれているものを自分で読み解いていくらでも学べるような力が必要になってくる。思い返すと、コロナ禍で急に会社がテレワークになってZoomをインストールしてこういう画面を出しましょう、と言われても指示書が読めず、『画面が真っ暗になっちゃいました』などと電話に頼らないと無理だった方も少なくなかった。行間ではなく行中を、空気を読むのではなく、文章を読みましょうということ。子どもたちには『必要に迫られた際、テキストさえあればいくらでも自力で学び続けられる自信』をつけて学校から卒業してほしいと思う」

 「シン読解力」をつけるためにはどうすればいいのか?

 新井教授は、「これまで文章は漢字が読めれば、あるいは教えれば読めるようになると誤解されてきた。リーディングスキルテストの結果、中学生の約3分の2は教科書を自力で読めるような状態に達することなく卒業していることが判明した。そのため、国語の題材よりもむしろ理科や社会などの教科書の音読や1分間視写などを勧めている。これにより、学習語彙を増やし、条件を満たすような短文を書けるようになるため、1年間しっかりやり通したいくつもの学校で国語の正答率が平均より約10ポイント上がった」と説明した。

 大人でもシン読解力を高めるトレーニングは間に合うのだろうか?

 「まず、1日1本のニュース記事を聞くのではなく、読むことだ。新聞のニュース記事は見出しに文字数の制約があるので、主語や述語が省略されているものも多く、それを補いながら読むことがまず重要だ。続いて、記事の見出しを適切な助詞や副詞を付けて補うことでつないで、リード文(導入文)と齟齬のない文章を作る。これを毎日1個ずつ訓練したことで仕様書を書く際に間違いが減るなど、生産性が上がる」

(『ABEMAヒルズ』より)