文部科学省と教育DXで連携しデジタル社会の構築を推進――デジタル庁 久芳 全晴氏インタビュー

AI要約

デジタル庁と文部科学省が連携して教育分野のデジタル化を推進しており、デジタル庁はデータ連携基盤の整備などに取り組んでいる。

教育データの活用にはアーキテクチャーやデータ標準化の整備が進む一方、具体的な利活用は文部科学省が判断し、業務改革や学習者へのメリット提供が重要視されている。

教育DXの進展に伴い、教育データの利活用ロードマップの改定が必要とされており、メリットや重要性をより明確に伝えるための取り組みが求められている。

文部科学省と教育DXで連携しデジタル社会の構築を推進――デジタル庁 久芳 全晴氏インタビュー

 デジタル庁は教育分野を含むデジタル社会形成に向けた国の司令塔であり、省庁間の調整役を担っている。教育分野全体のデジタル化に向けた環境整備について、同庁企画官の久芳全晴氏に聞いた。

──教育DXには、文部科学省とデジタル庁がそれぞれ取り組んでいます。両者の役割分担は?

 デジタル庁はデジタル政策の司令塔の役割と、国全体で使うデジタル基盤の構築や整備の両面の機能を担っています。教育分野は文部科学省とデジタル庁が連携して取り組みを進めています。

──具体的にはどのような取り組みを進めていますか。

 基本的に教育分野においては、デジタル庁は5年後、10年後を見越して、どのようにデジタル化を進めていくべきかという観点から政策立案をし、具体的な施策は文部科学省とデジタル庁が対話しながら、それぞれの立場で実施します。例えば、現在取り組んでいる高校入試のデジタル化は、自治体間のデータ連係になるのでデジタル庁が担当します。

 2024年6月に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」でデジタル化推進対象の準公共8分野、相互連携2分野を指定しました。教育は準公共分野の一つです。医療分野などと異なり、教育分野では基盤となるデジタルサービスが提供されていません。データ活用や連係がされていない分野で、デジタル庁が関係府省庁と連携して論点を整理し、データの取り扱いルールを含めたアーキテクチャーを設計してデータ連携基盤を構築します。

──教育データ利活用についてはどのように考えていますか。

 デジタル庁は教育データの活用に向けたアーキテクチャーやデータ標準化の検討・整備は進めますが、それが子供の学びにどのような意味を持つかを判断して導入を決めるのは文部科学省です。

 今のところ学校では、教育データを分析して子供たちの学びに役立てるところまでは進んでおらず、データを取ることの具体的なメリットを学習者に返せていません。データ活用では、まず教育委員会と学校が業務改革の観点から連携を進めることが重要でしょう。

 ただ、将来学習ログを学びの充実に生かそうとなっても、データ活用基盤がなければ、データを蓄積・分析して活用することができません。基礎自治体や県をまたぐ国全体の教育に関わる基盤の部分は、国が担当して整備すべきだという考え方があるのも分かります。一方で、すでに民間事業者がサービスを提供している分野もあります。そのあたりはよく調べて進める必要があるでしょう。

──教育データの利活用ロードマップの策定から2年半たちました。

 2022年に策定したロードマップは、教育DXのあらゆる話題を盛り込んだため、関連性や重要度が分かりにくい面がありました。GIGAスクール構想の第2期が始まり、生成AIが普及するなど、教育現場の状況は大きく変わりました。教育DXによって学校や教育委員会、保護者や児童・生徒にとってどのようなメリットがあるのか、分かりやすく伝えられるようロードマップを改定する必要があると考えています。

初出:2024年7月9日発行「日経パソコン 教育とICT No.29」