クレームのつもりが「カスハラ客」扱い? アンガーマネジメントのプロに聞く「怒りの伝え方」

AI要約

怒りは自分の期待や願望が叶わないときに生まれる感情であり、自己認識が重要である。

クレームは正当な要求を伝える手段であり、伝え方が重要である。

アンガーマネジメントの考え方を活用することで、怒りをコントロールしながらクレームを伝えることができる。

クレームのつもりが「カスハラ客」扱い? アンガーマネジメントのプロに聞く「怒りの伝え方」

客から従業員への暴言や不当要求といった迷惑行為「カスタマーハラスメント」(カスハラ)。東京都がカスハラ防止条例の制定を進めたり、企業が対策に乗り出したりしている。

カスハラのもとになる感情の一つが怒りだ。怒りのコントロール方法を学ぶ講座を開く「日本アンガーマネジメント協会」の戸田久実代表理事は、上手なクレームのポイントはアンガーマネジメントと「伝え方」にあるという。怒りとどう向き合うかを聞いた。(ライター・国分瑠衣子)

――そもそも怒りはなぜ生まれるのでしょうか。

「怒りは、自分自身の『こうあるべき』という考えが、その通りにならないときに生まれます。『こうあるべき』『こうするべき』は、自分の願望や期待、譲れない価値観を象徴する言葉です。願望や期待の通りにならなかったときに怒りが生じるということです。

どんな『べき』が自分にあるか知っておくことで、怒りを感じるパターンが見えてくると思います。人によっていろいろなパターンがあります。例えば私の場合は、特別な理由がある場合は別として、時間や期限が守られないことにイラっとすることがあります。怒りを感じるのは悪いことではありません。大事なのは自己認識です。

喜びや悲しみと同じく、怒りは自然な感情です。ただ他の感情よりもエネルギーは強い。だから扱いにくいんです」

――顧客が従業員に暴言や不当要求をする、カスハラが社会問題になっています。消費者の中には「クレームを言いたいけれどもカスハラだと思われないか」と、心配する声もあります。

「クレームは相手に伝えていいんです。ただし、正当なクレームとして受け取ってもらえるような伝え方が大事です。自分の期待値にサービス内容が届かなかった場合に不満を感じ、クレームに至るケースが多いと思います。まさに自分の『べき』が守られなかったときですので、怒りを感じることがあります。

アンガーマネジメントの講習では『怒りを表現するときは、リクエストとして伝えましょう』とアドバイスしています。クレームを伝えるときも同じです。

例えば飲食店で予想以上に長く待たされたとしましょう。

『オーダーした料理が30分たってもきません。後で頼んだ隣のテーブルには料理がきています。どんな状況か教えてください』というように、『30分待っている』『後で頼んだ隣のテーブルには料理がきている』という事実を伝えた上で、リクエストすることは正当なクレームです。

商品も同じです。買った商品が壊れていたら新品と交換してほしいとか、返金してほしいとか、要望はあるはずです。会社や店舗側がリクエスト通りに受け入れてくれるかどうかは別として、第一段階の要望を伝えること自体は問題ないと思います」