喫茶店のモーニング、発祥は? 広島、愛知…諸説あり 後復興、経済成長と共に

AI要約

喫茶店の「モーニング」の起源について広島市、愛知県一宮市、豊橋市などで異なる説が存在する。1950年代に各地で始まり、地元の食材を生かし、市民の生活を支える歴史がある。

広島市では、現在も営業する喫茶店「ルーエぶらじる」が、ホットコーヒーと目玉焼きが載ったトーストをセットで提供し始めたのが発祥。初代店主は戦後の広島を支援するため、セットを70円で提供した。

愛知県一宮市でも、ガチャマン景気の時代に静かな喫茶店が繁盛し、トーストやゆで卵を無料でサービスする動きも広がった。

喫茶店のモーニング、発祥は? 広島、愛知…諸説あり 後復興、経済成長と共に

コーヒーにトーストなどがセットになった喫茶店の「モーニング」。どこで、どうして始まったのか。日本コーヒー文化学会によると、発祥は広島市、愛知県一宮市、豊橋市など諸説ある。戦後間もなく、復興や経済成長ただ中の1950年代に各地で始まり、地元の食材も生かし、市民の生活を支えてきた歴史があった。

 広島市では、現在も営業する喫茶店「ルーエぶらじる」が、55年ごろにホットコーヒーと目玉焼きが載ったトーストをセットで売り始めたのが発祥だ。初代店主の末広武次さんは戦後、出征先の中国から帰国し、原爆で焼け野原になった広島を目の当たりにした。

 「今、生きている人を応援したい」。行方不明の家族を捜す客も店を訪れた時代、セットを70円で提供した。3代目店主の朋子さん(44)は「当時は破格の値段。採算度外視で続けた」と話した。

 一方、繊維業が盛んな岐阜県や愛知県では、戦後の経済成長を背景にモーニングが広がっていった。

 愛知県一宮市の一宮商工会議所によると、同市は50年代、機織り機をガチャンと鳴らすと万円単位でもうかる「ガチャマン景気」に沸いた。機織り機は動かすと大きな音が鳴る。商談や休憩の場として静かな喫茶店が繁盛した。

 発祥店は不明だが、トーストやゆで卵を無料でサービスする動きも広がった。養鶏が盛んな同県で客をもてなす食材として鶏卵がぴったりだったという。

 73年に同市で開業した「イーグル」店主の鷲津尚宏さん(81)は「20年前に市産の卵を使ったハムエッグなどをメニューに追加した。トースト、ゆで卵が定番のモーニングは他店との競争で多様化している」と話した。

 同市近隣の名古屋市では、喫茶店チェーン「コメダ珈琲店」が開業当初の68年からモーニングを実施。現在は47都道府県に1000店以上を展開し、モーニングは全国に広がった。

 「豊橋市では『仔馬』という喫茶店が、従業員への賄いを客に出したのが始まり」と語るのは、同市の「日付変更線180°E(イースト)」の店主、間宮義明さん(73)。

 同店の売りはボリューム満点の朝食。コロッケなどを盛り、朝食と昼食を兼ねた「ブランチ」を提供し始めたのは30年ほど前だ。

 同市は、甘くて歯応えのある柿「次郎」の産地。早朝の力仕事を終えた農家の「たくさん食べたい」需要に応えるため、朝食メニューを充実させた。間宮さんは「宅地開発で農家は減ったが、朝食をしっかり食べる文化が根付いた」と語った。