「スマホがなかった頃なら…」日本人の自信喪失の原因は「スマホ」の出現にあった:interrobang:…現代人を徐々に蝕む数多の「甘い毒」

AI要約

10代向けのメッセージを発信し続ける作家、鴻上尚史さんが新刊『君はどう生きるか』を刊行。

スマホによる他者との比較が自信を揺るがすこと、デフォルトモード・ネットワークの重要性、スマホ利用が思考整理を妨げる点などを指摘。

スマホからの距離を置くことでボーッとする時間を活用し、深い考えや良いアイデアを得ることの重要性を説いている。

「スマホがなかった頃なら…」日本人の自信喪失の原因は「スマホ」の出現にあった:interrobang:…現代人を徐々に蝕む数多の「甘い毒」

いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行した。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。

『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。

『君はどう生きるか』連載第25回

『「いいね」や「フォロワー数」が気になる...「周りの目」を気にせず、現代人が自分の人生を歩む方法』より続く

スマホは簡単には君に自信をくれません。

スマホがなかった時代、クラスで「物知り」と認められた生徒がいました。特定の分野に詳しい人です。

映画でもファッションでもサッカーでもプロレスでも編み物でも、とにかく、クラスのみんなが驚くぐらい詳しい人がいました。クラスメイトの驚いた顔とほめる言葉が、その人のプライドでした。

でも、スマホは簡単に「他にもっとすごい人がいるよ」と教えてくれるのです。

他の人と比較を続けていては、君が安心することはないでしょう。

「他の人よりもっと詳しくなろう」ではなく、「君が君の満足するレベル」を追求することが大切なのです。やっぱり、不安に対しても、一番有効な対策は、「君が面白いと思う」ことを追求するということです。

デフォルトモード・ネットワークというのは、脳が休んでいる時に活発に働く機能のことです。

ボーッとしている時に、さかんに活動している脳の部分があることが発見されて、知られるようになりました。

ずっと苦しんでもなかなかいい考えが浮かばなくて、お風呂に入った後、ふっといいアイデアが浮かんだ、なんてことはないですか?

それは、お風呂に入っている間に、デフォルトモード・ネットワークが働いて、情報を整理し、思考をまとめてくれたのです。

つまり人生には、ボーッとする時間が必要だということです。この時間、脳は休んでいるふりをしながら、じつは活発に情報をまとめて整理してくれているのです。

この時間によって、君はいいアイデアを得られるのです。

ところが、スマホはデフォルトモード・ネットワークの時間を奪ってしまいます。君は、ボーッとする時間があったら、すぐにスマホを見ませんか?

こう書いているぼくも、電車に乗ったら、昔はボーッとしていたのに、今はすぐにスマホを取り出します。ちょっと空き時間があったら、すぐにスマホを取り出します。どんどんデフォルトモード・ネットワークの時間が減っているのです。

思考を整理し、いいアイデアを考えるためには、スマホを遠ざけて、ボーッとする時間を、意識して作らないといけないと反省しています。