防衛省・自衛隊で異例の大量処分 海自トップ交代、防衛相辞任は否定

AI要約

防衛省・自衛隊で国の安全保障に関わる "特定秘密" の不適切な取り扱いなどが相次いで発覚した問題で、117人が懲戒処分とされ、海上自衛隊のトップも交代する異例の規模の対応が取られた。

防衛省によると、特定秘密の取り扱い、潜水作業手当の不正受給、基地内での不正な飲食、パワーハラスメントなどの不祥事が明らかにされ、専門機関である自衛隊でも信頼を失った幹部らが懲戒処分を受けることとなった。

懲戒処分の内訳は免職11人、降任2人、停職83人、減給14人、戒告7人にのぼり、責任を取るために増田事務次官が俸給月額10%を自主返納するなど、厳しい処分が取られている。

防衛省・自衛隊で異例の大量処分 海自トップ交代、防衛相辞任は否定

 防衛省・自衛隊で国の安全保障に関わる「特定秘密」の不適切な取り扱いなどが相次いで発覚した問題で、同省は12日、117人を懲戒処分とし、延べ103人を訓戒や注意とした。「背広組」と「制服組」のトップを含め、同省が公表した懲戒処分や訓戒の対象者は218人(延べ220人)という異例の規模になった。懲戒処分が最も多かった海上自衛隊のトップを交代する人事も発表した。

 木原稔防衛相は閣議後の記者会見で「防衛省、自衛隊の活動は国民の信頼あってだ。今回の事案は信頼を裏切る決してあってはならないもので、深くおわびする」と陳謝し、自身は大臣給与を1カ月分自主返納すると明らかにした。辞任は否定した。

 防衛省によると、処分の対象となったのは、特定秘密の不適切な取り扱い▽潜水作業に支給される手当の不正受給▽基地内の食堂での不正な飲食▽部下へのパワーハラスメント――の4項目。パワハラを除く3項目で計113人もの懲戒処分者が出た海自のトップ、酒井良海上幕僚長は指揮監督が不十分として減給1カ月(30分の1)の懲戒処分を受け、19日付で退職する。事実上の更迭とみられる。後任は斎藤聡自衛艦隊司令官が就く。

 さらに特定秘密の取り扱いを巡り指揮監督が不十分だったとして、増田和夫事務次官と吉田圭秀統合幕僚長、森下泰臣陸上幕僚長、内倉浩昭航空幕僚長ら最高幹部が訓戒を受けた。

 特定秘密では、適性評価をクリアしていない隊員が情報を知り得る状態にあったなどとする漏えい事案を43件、手続きに瑕疵(かし)があったとする事案を15件確認。海自では35隻の艦艇で保全措置が不十分だったほか、3隻で資格のない隊員に情報を取り扱わせていた。最高幹部をはじめ、27人を停職などの懲戒処分、94人を訓戒などとした。外部流出は確認されていないという。

 潜水手当の不正受給では、潜水艦救難艦の海自隊員ら免職11人を含む65人が懲戒処分に。訓練時間の虚偽報告などを繰り返し、不正受給は総額約4300万円に上った。また、厚木航空基地隊などに所属する海自隊員22人について、隊員食堂で総額約160万円分を不正に飲食したとして降任などの懲戒処分にした。

 「背広組」と呼ばれる内部部局(内局)で複数のパワハラが確認され、審議官級以上の幹部職員ら3人を停職や減給とした。内局の職員がハラスメントで懲戒処分されるのは初めて。責任を取り、増田事務次官が俸給月額10%(3カ月)を自主返納する。パワハラが一因となって、職員1人が精神疾患で療養を余儀なくされたという。

 懲戒処分の内訳は免職11人、降任2人、停職83人、減給14人、戒告7人。【松浦吉剛、木原真希、小田中大】