「殺意があったのは間違いないだろう」別府市長が言及…遺族の懸命の訴えも「殺人罪」に変更されない背景 別府ひき逃げ事件

AI要約

大分・別府市で起きた大学生死亡ひき逃げ事件が2年を迎え、遺族は殺人罪への変更を求めて警察署に署名と共に申し入れ。

殺人罪への変更に至らない現状に不満を抱く遺族は、全国に指名手配中の容疑者を追求。

過去のひき逃げ事件では殺人罪が適用されるケースもあり、法的な厳格さを求める声が高まっている。

被害者の遺族は書類受理されつつも、道路交通法違反容疑との見解に疑念を持ち、殺人罪への変更を求め続けている。

道交法違反容疑では時効により解決が困難であるが、殺人罪に切り替える可能性が示唆されている。

ひき逃げ事件において過失致死や殺人未遂などの罪で実刑判決を受けるケースが存在し、事件の悲劇性と過失の程度が審理の結果に影響を与える。

「殺意があったのは間違いないだろう」別府市長が言及…遺族の懸命の訴えも「殺人罪」に変更されない背景 別府ひき逃げ事件

 大分・別府市で起きた大学生死亡ひき逃げ事件は、発生から2年を迎えた。遺族は「被害者は事故でなく殺された。その無念を晴らしたい」との思いから、全国に重要指名手配されている八田與一(はった よいち)容疑者の殺人罪への変更を申し入れるため、約7万7000人の署名とともに、別府警察署を訪れた。

 「別府願う会」事務局長による「時効を撤廃したい気持ちと、“殺人犯”として攻めの捜査をしていただきたい」との申し入れに、大分県警側は「引き続き、総力を挙げて、全力で取り組む」と答えた。同席した元徳島県警捜査1課警部の秋山博康氏は、申し入れの場で「私の経験から、やはり殺人でやってほしい。遺族の涙を毎日見ている」と呼びかけていた。

 これまで遺族らは、現在の道路交通法違反容疑から、殺人罪への変更を求めて、署名活動を行ってきた。5万人を超える賛同を得て、殺人罪での告訴状提出に至った。しかし、受理はされたものの、いまだ殺人罪への変更には至っていない。

 亡くなった大学生Aさんの父親は「書類は受理したものの『道交法で最後までいきます』との雰囲気を醸し出していた。『精一杯やれることはやっています』との回答しかない」と語る。現在の「救護義務違反」は7年で時効を迎えるが、殺人罪では撤廃される。

 ABEMA的ニュースショーは昨年10月、大分県警への取材で、なぜ殺人容疑に切り替えないのかと質問。県警交通指導課の安藤竜夫次席は当時、「県警としては殺人含め、過失致傷、危険運転致傷などを視野に入れている」としつつ、「殺人となると100%と言えないところもある」と返答。時効が迫ると、殺人罪に切り替えるのかとの問いには、「切り替えるかはその時の判断にもよるが、我々としても、そこまで長引かせるつもりはない」との見解を示していた。

 検事を4年務めた西山晴基弁護士(レイ法律事務所)は、一般論として、ひき逃げで殺意や未必の故意が条件となる殺人罪を問うことは難しいと語る。

「実はひき逃げだけでは実刑にならない。過去の裁判例では基本的にそうで、自動車運転過失致死、致傷でひき逃げで救護義務をしなかった事案でも、大多数は執行猶予になっている」(レイ法律事務所・西山晴基弁護士)

 とはいえ、ひき逃げで殺人や殺人未遂が適用された事例もある。これまでの例を、西山弁護士が紹介する。

 千葉県柏市で2006年、女子高生3人が負傷したひき逃げ事件では、被害者の1人が車両底部に挟まれたまま、約400メートル引きずられ、骨盤などを折る重傷を負った。この事件では運転していた男が、殺人未遂と危険運転致傷の罪で起訴され、懲役16年の実刑判決を受けている。

 長野市で2012年に起きた、酒気帯びのひき逃げ事件でも、被害者の1人が車両底部に挟まれたまま、約700メートル引きずられて死亡した。こちらの容疑者は殺人罪で起訴され、懲役17年の実刑判決が下った。「車の下に人を巻き込みながら走れば、人が死ぬ危険性が高いのは明らか。他の衝突事案に比べると、殺意を認定しやすい」と説明。

 こんな事例もある。2012年に東京都荒川区の路上で、一時停止違反の乗用車が急発進し、巡査部長をはねて逃走した。巡査部長は左足骨折などの重傷を負い、逃げた2人組は殺人未遂と公務執行妨害で逮捕された。「『警察官が自分を捕まえようとしている』『職務質問しようとしている』という状況をわかりながら車を走らせているところで、殺人未遂や殺人罪は適用されやすくなる。警察にとっても威信に関わるのでより立件して捜査をする」とした。