店を閉め「珠洲には仕事ない」と市外へ…被災後、奥能登の地域経済が弱体化

AI要約

地震と津波で全壊判定を受けた石川県珠洲市最大の商業施設「ショッピングプラザ・シーサイド」が悲惨な状況にある。

地震前から経営が苦しかった商業施設は、再建しても人口流出で厳しい状況である。

奥能登地域では地震により経済が弱体化し、多くの企業が廃業を余儀なくされている。

 約50台を収容する駐車場は地盤隆起で波打ち、傾いた店内は津波をかぶった商品が散乱したまま。石川県珠洲市最大の商業施設「ショッピングプラザ・シーサイド」は、帰省客らでにぎわっていた新春セールさなかの地震と津波で全壊判定を受けた。

 1979年の開業以来、書店やスーパーなどのテナントが市民生活を支え、雇用を生んできた。ただ、地震前から経営は苦しかった。開業年に3万人近くいた市の人口は、昨年末に1万2573人。地震を機に人口流出は進み、再建しても厳しいことは明白だった。

 建物の管理組合が作ったテナント運営会社は、5月に事業停止を決めた。多間(だま)利一代表(61)によると、従業員約50人のうち、2人が地元を離れて仕事を見つけたが他は分からない。自身は2日から金沢市のタクシー会社で乗務を始める。「珠洲には仕事がないから仕方ない」

 能登半島地震は、奥能登の地域経済を加速度的に弱体化させている。

 読売新聞の調べでは6月28日現在、奥能登4市町(珠洲、輪島、能登、穴水)の120社が地震後に廃業を決めた。奥能登の5月の有効求人倍率は0・64。県内6地点で唯一、求人数が求職者数を下回る「1」未満が4か月続く。高校生の就職活動にも影響が出始め、県立飯田高校(珠洲市)の進路指導担当には「新卒は採らない可能性がある」と複数の事業所から連絡があった。

 雇用の減少は、若い世代の流出に直結している。4市町の40歳代以下人口は4月までの1年で1686人減。それ以前の5年平均は約1000人だった。

 被災地では一般的に工事関連の求人が多くなり、需給のミスマッチも生じる。輪島市の自宅が全壊した新甫(しんぼ)真美さん(46)は、病院事務の仕事を辞め、金沢市のみなし仮設住宅で暮らす。中学1年の娘は市内の学校に転校した。「戻っても希望する仕事は少ない。金沢で働きたい」と話す。

 石川県や市町はなりわいの再建を急ぐ。県は被災した中小企業や小規模事業者などに対し、設備の復旧費などを75%(上限15億円)補助する「なりわい再建支援補助金」を創設した。珠洲市は同補助金に1事業者あたり最大1000万円を上乗せする独自制度を設けた。