当時を知る唯一の池田小教員「決して事件を風化させない」…娘を失った父は笑顔の写真に誓う

AI要約

児童8人が亡くなり、教師2人を含む15人が重軽傷を負った大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件から23年が経過。

追悼式典「祈りと誓いの集い」が行われ、犠牲者の冥福を祈る。

遺族や在校生ら約770人が参加し、再発防止への誓いを新たに。

真田巧校長は事件の記憶を風化させず、安全な学校を実現する決意を表明。

犠牲者の名前を刻んだモニュメントが建てられ、参列者が黙とう。

教員、生徒らが一致団結し、未来の子供たちの安全を願う。

紀宏さんは亡くなった長女の思い出を胸に刻み続けている。

日常の中でも優希さんとの絆を感じ、淡路島で再び笑顔を共有。

教訓を生かし、安全対策に憤りを示しつつ、次世代へのメッセージを継続。

 児童8人が亡くなり、教師2人を含む15人が重軽傷を負った大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)の児童殺傷事件から8日で23年となった。同小では追悼式典「祈りと誓いの集い」が営まれ、遺族や在校生ら約770人が犠牲者の冥福(めいふく)を祈った。

 事件が起きた午前10時12分に、犠牲となった8人の名前を刻み、再発防止への決意を込めて建てられたモニュメント「祈りと誓いの塔」の八つの鐘が鳴らされ、参列者が黙とうした。

 事件時に6年生の担任で、今は同小で唯一当時を知る教員となった真田巧校長(56)は「決して事件を風化させることなく、目の前の塔が建てられた深い思いを受け継いでいけるよう、努力を続ける」とあいさつ。参列者とともに「安全な学校」の実現を誓った。

 2年生だった長女の本郷優希(ゆき)さん(当時7歳)を亡くした紀宏さん(59)は8日、付属池田小を訪れ、事件現場となった教室や廊下を歩いた。背広のポケットに忍ばせたのは、カラフルな花々に囲まれた笑顔の優希さんの写真。事件後、常に持ち歩いている。

 事件前年の2000年夏、兵庫県の淡路島にドライブ旅行した時のもので海水浴や花のイベントを満喫した思い出の一枚だ。「日焼けしてにこにこ笑う姿が、とってもかわいらしかった」。紀宏さんはそう言って目を細めた。

 紀宏さんは常に優希さんに自分の姿を見てもらえているように感じている。

 今年5月、親族を連れて久しぶりに淡路島を訪れた。晴れ渡る空の下、丘陵地で見たポピーに心を癒やされた。水平線に沈む夕日が美しく、約24年前の光景と重なった。「きょうも優希と一緒に笑顔を重ねられて良かったな」。心の中でそう語りかけた。

 一方で、事件で怖い思いをして傷ついた優希さんの心中を思うと、今も胸が張り裂けそうになることがある。安全であるべき学校の敷地内に不審者が侵入する事案を耳にすると、防犯対策の不十分さに憤りがわく。

 事件を風化させることなく、学んだ教訓を子どもたちや教員の安全につなげてほしくて、年に数回のペースで「命の大切さ」などをテーマに教員を目指す若者や警察官、自治体職員らに講演を続けている。

 「次世代の子どもたちに愛情をもって接し、命の大切さを伝えることで加害者も被害者も生まない社会と学校安全を実現させたい」。追悼の日に改めて、そう誓った。