プロもお手上げ!? 「私にはわからない」…金融市場で“世界金融危機レベル”の〈利下げ織り込み〉が進んだワケ【マクロストラテジストの見解】

AI要約

米国では景気後退懸念により利下げ期待が高まっており、市場は不確実な状況にある。

米国株式市場や日経平均先物は8月の軟調な雇用統計を受けて調整したが、米国リートや米国ハイ・イールド債券は比較的堅調に推移している。

金融市場では、過去の景気後退時と同じスピードでの利下げが織り込まれており、利下げ織り込みの大きさも過去より大幅である。

プロもお手上げ!? 「私にはわからない」…金融市場で“世界金融危機レベル”の〈利下げ織り込み〉が進んだワケ【マクロストラテジストの見解】

現在の米国では、景気後退に対する懸念を背景に、マーケットで「利下げ」の織り込みが進んでいます。こうしたなか、今後の米国株の展開について、フィデリティ・インスティテュートの首席研究員である重見吉徳マクロストラテジストは、現在の相場環境について「過去10年でもっともわからないタイミング」と嘆きます。詳しくみていきましょう。

8月分の雇用統計が軟調だったことで、米国株式市場や日経平均先物は大幅に調整しました(→米国債の2年物と10年物の金利差は週次ベースで「逆イールド」が解消しました)。

他方で、米国リートは米国株式に比べて堅調に推移しました(→図表1を、利回りの比較/スプレッドなどで示していない理由は、シンプルに確認していただくためです)。

また、米国ハイ・イールド債券は、米国債には劣後したものの、米国株式に比べて堅調に推移しました(→同上)。

「分散投資の重要性が高まっている」との考えに変わりはありません。

先週は、ISM製造業景気指数に始まり、JOLTS(雇用動態調査)、ベージュ・ブック(米地区連銀経済報告)、チャレンジャー・グレイ・クリスマス社の人員削減数調査、そして雇用統計と弱めの経済指標やレポートが相次ぎました。

長期のチャートで金融市場による直近の利下げ織り込み(≒「政策金利が折れ曲がる角度」)を眺めると、「過去の景気後退時と変わらないスピードでの利下げ」が織り込まれているようにみえます。

もうひとつ、利下げ織り込みの大きさを「5年国債利回りと政策金利との差」で測ると、通例どおり5年国債利回りが利下げ開始を先読みして低下しているものの、(当該金利差で測った)現在の利下げ織り込み幅は、「ITバブル崩壊前や世界金融危機前といった、その後に深刻な景気後退が訪れたときよりも大幅である」ことがわかります。

大幅な利下げ織り込みは「数ヵ月前」から始まっていた

筆者にとってのパズルのひとつは、こうした大幅な利下げ織り込みは、必ずしも今年8月以降や先週の経済指標の悪化を受けて生じたものではなく、経済指標が堅調で(完全なる)ソフト・ランディングが見込まれていた数ヵ月前からすでに大幅だった、ということです。

加えていえば、最近の経済指標の悪化を受けても(たとえば、昨年末の利下げ期待が高まった局面と比べても)利下げ織り込みは多少深まった程度です。