オールジャパンで挑む宇宙ビジネス、3,000億円「宇宙戦略基金」の使い道とは?

AI要約

日本の宇宙開発の取り組み、宇宙戦略基金の創設、宇宙産業の市場成長について紹介。

宇宙関連技術の民間開放による市場拡大、官主導から民間企業主導への移行。

宇宙戦略基金の基本方針や技術開発テーマ、目標市場拡大の詳細。

オールジャパンで挑む宇宙ビジネス、3,000億円「宇宙戦略基金」の使い道とは?

 人類の活動領域が宇宙空間まで拡大し、世界各国で宇宙開発を強力に推進している。国際的な宇宙開発競争が激化する中、日本では2024年4月に内閣府や経済産業省、総務省、文部科学省を主体として「宇宙戦略基金に基づく基本方針」を公表した。2024年3月には、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に「宇宙戦略基金」を創設、2024年5月末には宇宙基本計画工程表を改訂している。さらに合計で3,000億円(2023年度補正予算)を措置し、10年で1兆円規模を目指す計画を立てているが、具体的にはどんなことをするのか。「宇宙戦略基金の基本方針」と技術開発テーマ、展望について解説する。

 宇宙産業の市場は大きな成長が見込まれている。 少し古いが宇宙産業に関する調査で知られるBryce Techの「2022 Global Space Economy at a Glance」によると、世界の宇宙産業の規模は約54兆円規模(1ドル140円計算)で、全体の約4分の1が政府予算、約4分の3が民間衛星・打ち上げ関連という。

 モルガン・スタンレーによると、世界の宇宙産業の市場規模は、2040年までに1兆ドル規模になると予測しており、今後さらなる市場拡大が見込まれる。

 宇宙産業の市場成長は、宇宙関連技術の民間開放により宇宙開発の中心が官主導から、SpaceXなどの民間企業にシフトしつつあることが背景にあるのだ。

 日本国内に目を向けると、日本の宇宙開発は、長年、大手重工・電機メーカーを中心に進められてきたが、近年、大学などから約100社の宇宙ベンチャーが勃興している。日本の政府はもちろん、関連する団体をみると、オールジャパンで取り組んでいることがわかる。

 宇宙産業にさらなる市場拡大が見込まれる中、政府としても中長期的な視点で民間企業や大学を支援することが重要である。

 今回公表された「宇宙戦略基金に基づく基本方針(以下、基本方針)」では、民間企業や大学などが複数年度にわたって研究開発に取り組めるよう「輸送」「衛星など」「探査など」の3分野において「市場の拡大」「社会課題解決」「フロンティア開拓」の3つの出口に向けて取り組むという。

 前提となるのは、2023年6月に公表した日本の勝ち筋を見据えながら、開発を進めるべき技術をまとめた「宇宙技術戦略」だ。本戦略では、「衛星」「宇宙科学・探査」「宇宙輸送」「分野共通技術」から構成されている。

 基本方針では、2023年6月に策定した宇宙技術戦略で抽出された技術項目から22の技術開発テーマを設定。そして、スタートアップをはじめとする民間企業や大学などが複数年度(最大10年)にわたって大胆に技術開発に取り組めるよう、JAXAが宇宙分野の資金配分機関として支援する。

 本事業による技術開発支援により、宇宙関連市場の拡大、宇宙を利用した地球規模・社会課題解決への貢献、宇宙における知の探究活動の深化・基盤技術力の強化を目指す。

 宇宙関連市場の拡大では宇宙基本計画に基づき、2020年に4兆円となっている市場規模を、2030年早期に8兆円に拡大していくことを目標としている。