ホンダロケット、北海道で燃焼実験など着手 開発の表明以来3年ぶり新情報

AI要約

ホンダが北海道大樹で自社開発ロケットのエンジン燃焼実験を開始。宇宙産業分野での新たな取り組みで、29年までに小型ロケットの打ち上げを目指す。

大樹町との協力で「北海道スペースポート(HOSPO)」に実験環境を整備。地元との説明や安全対策を重視し、実験を進める方針。

今回の実験成果を踏まえて、ロケット開発の方向性を再評価する予定。大樹町が宇宙のまちづくりに期待を寄せる。

ホンダロケット、北海道で燃焼実験など着手 開発の表明以来3年ぶり新情報

 【北海道大樹】自動車メーカーのホンダが、自社開発ロケットに搭載するエンジンの燃焼実験などを北海道大樹町内で開始したことが明らかになった。町の協力を得て「北海道スペースポート(HOSPO)」の隣接エリアに独自の実験環境を新設。7月末から9月末にかけて集中的に試験を行うプログラムで進めている。

 同社は2021年にロケット開発を表明したが、開発動向が外部に伝わるのは3年ぶり。北海道・十勝にとっては、宇宙産業分野で日本を代表するものづくり企業とつながりが生まれる形となった。(奥野秀康)

 ホンダは、F1や二足歩行ロボット「アシモ」、小型ジェット機「ホンダジェット」などに続く「新たな夢」として、宇宙領域に挑戦する方針を打ち出している。ロケット分野では衛星を搭載して低軌道に達する小型ロケットを開発。クルマの自動運転で培った制御・誘導技術を活用して機体の一部を着陸させ、再使用可能にする機能も実現し、29年までに打ち上げることを目指している。

 大樹で始めたロケット用エンジンの燃焼実験に関しては、ホンダ製品の研究・開発を担う中核会社「本田技術研究所」の櫻原一雄宇宙開発戦略室長が十勝毎日新聞社の取材に応じ、明らかにした。

 今回はHOSPO周辺の用地を借り、コンクリートを敷設するなどして燃焼実験の環境を整備した。本田技術研究所が実験を担当。全長6メートル、重さ1トン程度の実験機の1段目にエンジンを搭載し、燃焼実験とともに、高さ1、2メートル程度まで機体を浮かせて降ろすホバリング実験を行う。既に周辺住民や漁協への説明も実施しており、「安全に万全を期し、環境などへの配慮を十分にしながら実験を進めたい」としている。

 次段階では機体を高度300メートル程度まで浮かせ、精密な制御を行いながら地上に降ろす実験を視野に入れている。ここまでの試験に関しては、大樹でも実施可能なように実験環境を整えている。

 櫻原室長は「国内では、打ち上げの手前の燃焼実験やホバリング実験でも十分な環境を整えて実施できる場所が大樹町以外にあまり見当たらない状況だ。協力していただいている町の皆さんには大変感謝している」とし、宇宙分野の実験に集中して取り組める大樹の事業環境を高く評価している。

 ただ、今回の実験成果を踏まえてロケット開発全体の方向性を考える必要があり、「中長期的に大樹での実験を継続するか否かは、今回の計画の進捗(しんちょく)や成果を見てから改めて検討する」としている。

 大樹で活動する宇宙関連企業の顔触れにホンダが本格的に加わるかは現段階では判断できないが、大樹町の黒川豊町長は「宇宙のまちづくりを評価し、実験を行ってもらえるのはうれしい。今回のプロジェクトが成功して、事業の継続、拡大につながることを期待している」とコメントしている。