長距離トラックを電動化するには「充電ステーション」はいくつ必要? 欧州の先行研究から

AI要約

電気自動車の充電インフラ整備が重要であり、大型トラックの電動化にはメガワット充電器の開発が不可欠。

欧州では2030年までに長距離輸送の15%を電動化するためには約9000か所のトラック用充電ステーションが必要。

アマゾンとフラウンホーファー研究機構の共同研究によると、メガワット充電器を最適に配置することで必要な充電ステーションの数は少なくなる可能性がある。

長距離トラックを電動化するには「充電ステーション」はいくつ必要? 欧州の先行研究から

 電気自動車の稼働を支えるには、充電施設が必要だ。大型トラックの電動化を進めるには、どれだけの充電ステーションが必要だろうか?

 アマゾンとフラウンホーファー研究機構の共同研究によると、ロケーションを最適化することでステーションの数は従来予想より少なく済むらしい。それよりも、大型車用にメガワット級の大電力に対応した充電器を開発することが重要になるようだ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部

写真/MAN Truck & Bus

 内燃エンジン車の運行にガソリンスタンドが必要なように、バッテリーEV(BEV)の運行には充電ステーションが必要だ。現状では、BEVはエンジン車より航続距離が短く、充電インフラの整備に膨大なコストがかかる。走行距離の長い長距離輸送用トラックなら猶更だ。

 欧州連合(EU)の「グリーンディール」は、全産業に温室効果ガスの削減を義務付けているが、貨物輸送の脱炭素においてBEVは最も有力な手段とされ、2030年までにEU域内ではBEVトラックのシェアが最大50%に達すると予想されている。ただし長距離トラックは、EUの想定でも15%にとどまる。

 課題となっているのはやはり充電インフラで、長距離輸送を電動化するには公共の充電ステーションが欠かせない。

 また、ステーション以上に重要なのが規格策定中の「メガワット充電システム(MCS)」など、大型車用の充電規格となる。商用車の運行には休憩時間の義務があり(これは日本も同じ)、「法定休憩時間中に充電できる電力量」によって、実際の航続可能距離やBEVで可能な業務が大きく変わるからだ。

 (ちなみに日本では「430休憩」(4時間の連続運転につき30分以上の休憩)だが、欧州は4.5時間の運転につき45分の休憩がトラックドライバーの義務となる)

 EU加盟国は高速道路に一定間隔(50~100km)でステーションを整備することを想定している。この方法で2030年までに長距離輸送の15%を電動化するには少なくとも9000か所のトラック用充電ステーションが必要になるという(法定休憩時間中の充電のみで運行した場合)。

 より効率的に電動化を進めるには、充電器の設置場所を最適化した「最小の」充電ネットワークを定義することが重要になっている。

 幸い(?)、大型車を駐車可能なスペースは限られており目的地もほとんどが物流施設などになるため、シミュレーションを行なう場合に不可欠な出発地・目的地のペア(ODペア)は乗用車より相応に少ない。このため、商用車の充電ネットワークは需要に基づいた最適化が行ないやすい。

 この度、EC大手のアマゾンとドイツのフラウンホーファー研究機構が共同で実施した研究によると、メガワット充電器を最適に配置することで、長距離トラックの電動化で必要とされる充電ステーションの数は、従来考えられていたより大幅に少なくなるかもしれない。