EVユーザー約5割が「ガソリン車に戻りたい」……問題はやっぱり「充電」だった

AI要約

EV普及が頭打ちを迎え、米国の46%のEVユーザーが「ガソリン車に戻りたい」という調査結果が出た。主な要因は充電ステーション不足。米国のEV充電ステーションは増加しているものの、特に都市部以外では不足が顕著。

公共の充電器は全米に約6万7900軒あり、ガソリンスタンドの約半分。しかし、西海岸や東海岸など主要都市部に集中しており、地方では不足が続いている。

EV充電ステーションの増設を妨げる障壁が存在し、これを乗り越える必要がある。トヨタやホンダなどの自動車メーカーも新たな動きを見せている。

EVユーザー約5割が「ガソリン車に戻りたい」……問題はやっぱり「充電」だった

 EV普及が頭打ちを迎えている。その上、米国EVユーザーも46%が「ガソリン車に戻りたい」とマッキンゼーの調査で答えているという。こうした状況を招いた大きな要因が充電ステーションだ。中でも、EV充電で事実上の北米標準規格となったテスラが、4月に自社充電部門を閉鎖したのは業界に大きな衝撃が走った。これに対して、トヨタやホンダらのEV関連企業が新たな動きを見せる。本稿では、EV充電網の現状をまとめ、今後の動向を占う。

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 米国におけるEVの普及が頭打ちになっている。自動車市場調査企業の米コックス・オートモーティブがまとめた四半期ごとのEV新車販売台数と新車販売全体に占める割合(冒頭の図1)を見ると、「横ばいあるいは前年割れ」の傾向が顕著になった。

 そして、コンサルティング大手のマッキンゼーが6月に発表した調査においては、現在米国でEVを保有する層の46%が「ガソリン車に戻りたい」と答えている。その大きな理由として挙げられるのが、充電網の整備が進んでいないことだ。特に公共の充電ステーション不足は深刻で、EV購入に前向きな消費者をためらわせる要因になっている。

 その充電ステーションについて、米エネルギー省によれば全米で約6万7900軒が設置済みという。それらの施設には、公共の充電器と、限られたユーザーのみが使える充電器の合計18万8600個が備わっている。ちなみに米国石油協会(API)のレポートによれば、全米のガソリンスタンドの数はおよそ14万5000軒で、給油ノズルの数は150万個だった(図2)。

図2:依然としてガソリンスタンドの方が大きな数字を保っている

(米エネルギー省や米国石油協会のデータを基に筆者作成)

 とは言え、EV充電ステーションは、2020年のわずか2万9000軒から、2024年には倍以上になっており、大きな進歩を遂げている。しかしその実態は、主にEVオーナーの多い大都市部に集中しており、特にEV普及率の高い西海岸と東海岸にはより多く設置されている(図3)。

 どのような都市や小さな町にも当たり前のように存在するガソリンスタンドと比較して、EV充電ステーションは都会を一歩離れるとその数が圧倒的に少なく、都市部以外におけるEV販売の足を引っ張る結果になっているのだ。

次のページでは、充電ステーションの動向をさらに深堀しつつ、充電ステーションの増設を妨げる障壁を4点などについて解説します