急速な円高は「ポスト岸田」候補の口先介入効果か 茂木&河野両氏の「利上げ」発言が影響

AI要約

円相場が上昇し、岸田文雄首相の後継候補からの日銀利上げ要求が影響を与えた。

茂木敏充幹事長と河野太郎デジタル相の発言が円高を促し、市場の風向きが変わった。

米国の物価下落と政治的動きが円相場に影響を与え、円高が進行している。

25日の円相場は対ドルで上昇し、ロンドンの外国為替市場では一時1ドル=151円台を付けた。30~31日の日銀の金融政策決定会合を前に、岸田文雄首相の後継を狙う「ポスト岸田」候補の2人から日銀に追加利上げを求める発言が強く影響したとみられている。異例の〝口先介入〟が市場に与えたインパクトは大きく、日米で開いていた金利差が今後縮小するとの見通しの確度はさらに高まり、円買いドル売りを加速させたとみる向きは強い。

■発言後に円急伸

日銀に対し、利上げを求める発言をしたのは、自民党の茂木敏充幹事長と河野太郎デジタル相だ。茂木氏は22日の都内での講演で、「日銀は段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」と言及した。

17日には河野氏が米メディアのインタビューで、「日銀は政策金利を上げる必要がある」「円は安過ぎる。価値を戻す必要がある」などと発言。両者の発言後に外国為替市場の円相場は対ドルで急伸し、現在の円高傾向へ揺り動かすきっかけとなった。

■発言で風向き変わった

この2人の発言で「為替市場の風向きが変わった」とみるのは、みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストだ。「これまで党の幹部や大臣クラスが、日銀の独立性を脅かしかねないような踏み込んだ発言をした例がない」と説明。「これまで政策変更に弱腰だった日銀に発破をかけるような政府の動きの顕在化は、大きな流れの変化を感じさせる」と話す。

そもそもの円急騰のきっかけとなったのは、11日に発表された6月の米国の物価上昇率の要素が大きい。物価指数が市場予想を下回り、インフレの落ち着きから米連邦準備制度理事会(FRB)が9月にも利下げに動くとの観測が高まったことで、円を買う動きが加速した。

■総裁選も意識か

「2人の発言が市場の与えた影響は大きかった。このタイミングで口先介入を狙ったのならば、その効果は大きい」。そう話すのは三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト。2人の発言が、市場が円高に振れたタイミングを捉えた〝円の押し上げ介入〟効果があったとみる。ただ、日銀の独立性の確保という観点では、「2人の発言は好ましくない」とも指摘した。

一方で、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「両者の発言は9月の自民党総裁選に向けたアピールの側面が強い」と強調する。「少なくとも、今月の日銀の決定会合での利上げを求めている意図とは読めない」といい、「自身の発言の市場への影響力をみせたかったのではないか」とみる向きもあるようだ。(西村利也)