百貨店が従来モデルから脱却 サブカル店や医療施設で集客も 訪日客〝特需〟終了に危機感

AI要約

百貨店業界では、従来のビジネスモデルからの脱却が進み、集客力強化のために店舗改装だけでなく周辺の商業施設も整備されている。

J・フロントリテイリングが名古屋市中心部で参画する再開発計画では、地上41階、地下4階の超高層ビルにはオフィスや高級ホテルが入り、インバウンド客を見込んでいる。

高島屋も、専門店との相乗効果を狙い、百貨店の雰囲気を保ちつつ若い世代の取り込みを図る新戦略を展開している。

百貨店が従来モデルから脱却 サブカル店や医療施設で集客も 訪日客〝特需〟終了に危機感

サブカルチャー専門店やクリニックで集客も-。百貨店業界で従来のビジネスモデルからの脱却が進む。集客力強化では店舗改装だけでなく、近隣に商業施設などを整備して人流の誘い込みを促進。本業の売り上げが主体の収益源は、不動産事業の存在感が大きくなってきた。訪日客(インバウンド)需要で業界全体が潤う今も、各社が足腰の強化を続ける背景には「この追い風がいつまでも吹くわけがない」(百貨店関係者)との危機感がある。

■J・フロント、名古屋で高級施設

地上41階、地下4階の超高層ビルには、オフィスや映画館、商業施設が入り、最上部の高級ホテルはインバウンド利用を見込む。

大丸や松坂屋を運営するJ・フロントリテイリングが参画する名古屋市中心部の再開発計画の概要だ。施設の名称は24日、「ザ・ランドマーク名古屋栄」と発表された。令和8年夏ごろ開業予定で、近隣に並ぶ松坂屋など同社系列の商業施設にも人の流れが行き渡ることが期待される。

地下2階~地上4階に出店する新たな高級商業施設は、同社へのテナント賃料収入も生み出す。同社の不動産事業は営業利益ベースで、百貨店事業の3割程度の規模に達している。

平成以降の百貨店業界の衰退を受けた経営統合で同19年に誕生した同社は、これまでもショッピングの中心地である東京・銀座から松坂屋を撤退させ、高級ブランド店が入った複合施設を開業させるなど〝脱百貨店〟を実行してきた。

担当者は「右肩下がりだった時期を忘れてはならない。業態にとらわれず、時代のニーズに対応した事業を進める」と説明する。

■高島屋、専門店と相乗効果狙う

多様なテナント構成は客層の広がりを期待できる一方、百貨店のブランドイメージを損なう恐れもある。

高島屋京都店(京都市)は昨年10月、任天堂の公式グッズを扱う直営店、中古の漫画や玩具がそろう専門店などが入った商業施設を別の建物として隣接地にオープン。百貨店の雰囲気を維持しつつ、新たに若い世代の取り込みを図る。

こうした戦略は首都圏の店舗でも展開されており、担当者は「地域の特性に合わせつつ、専門店と既存百貨店との相乗効果を高めて集客を図る」と話す。