“F1ムラ”という閉鎖性 「アンドレッティ参戦」を巡る、米国・欧州の対立とは

AI要約

F1の新規チーム参入に対する障壁や問題が浮き彫りになっている。F1の閉鎖的な構造と米国からの挑戦、そして他国の商習慣との摩擦が明らかになっている。

高級ブランド・エルメスのバーキンやNBAのサラリーキャップ制度に見るように、競技界での競争や均衡を保つ方法が模索されている状況が示唆されている。

F1の未来においても、ビッグチームの優位性や競争力を保つための施策が模索されることが予想される。

“F1ムラ”という閉鎖性 「アンドレッティ参戦」を巡る、米国・欧州の対立とは

 本連載「開かれたF1社会とその敵」では、F1の歴史と閉鎖的な構造に焦点を当て、変化の可能性を探る。F1の成長とともに形成された独自の「F1ムラ」における利益と利他の対立、新規チームの参入の難しさ、そしてオープンな社会への道筋を検証する。F1の未来と進化に向けた具体的な可能性を示し、閉鎖的な構造からの脱却戦略を提案する。

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 F1ファンやレーシングドライバーは、チーム数の増加を歓迎しているが、チーム経営者たちは分配金の減少を懸念して慎重な姿勢を見せている。

 現在、米アンドレッティ・グローバルがF1の11番目のチームとして参戦を目指している。しかし、F1の管理を行うフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)は2026年までこれを認めていない。この問題は、閉鎖的な“F1ムラ”に対する米国からの挑戦であり、欧米の価値観の対立を反映している。

 さて、フランスのエルメスが誇るバーキンは、ハンドバッグ界の頂点に立つ存在で、サイズによっては100万円を超えることも珍しくなく、なかには1000万円を超えるものもある。

 2024年3月、ふたりの消費者がエルメスをカリフォルニア州で反トラスト法違反で提訴した。彼らは、バーキンを購入するためには他のエルメス製品を一定数購入する必要があり、これが違法な“抱き合わせ販売”だと主張している。

 バーキンは、ファッション界の知識がある人々には知られているとおり、VIP向けのアイテムであり、エルメスのような高級ブランドは意図的に供給を制限して商品の価値を高めている。

「どのレベルなれば買えるのかわからない = 明確なルールがない」

とされ、原告が敗訴しても商習慣の透明化が進む可能性は残されている。

 米国での話をもうひとつ。

 プロバスケットボールのNBAには「サラリーキャップ」という年俸の上限があるが、それを超えると「エプロン」と呼ばれる、お金では解決できない制限が課せられる。

 なぜなら、上限を超える制裁金を支払ってでも、年俸の多い優秀な選手を集めて試合に勝とうとするチームが増えているからだ。

 NBAは資金力のあるビッグチームが結成され、そのうちの数チームが優勝争いをすることを懸念し、制裁金に加え、トレードやドラフトの制限を認める「セカンドエプロン」も導入し、競技場の均衡を図っている。

 つまり、ウィリアムズでも勝てる状況を作ろう、レッドブルのような「4強」ではなく「10強」を目指そう、というのが米国の基本的な考え方である。

 欧州サッカーでもレアル・マドリード、マンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘンなどのビッグクラブだけが勝つことは不可能であり、F1でもサラリーキャップや風洞実験制限などを導入しているが、ビッグチームの存在にはそれほど気にしていない。