会社の窓口には相談しにくくて…ハラスメント相談代行のメリットと「3つの事例」

AI要約

厚生労働省が全ての企業にハラスメント防止対策を義務づけ、パワハラ防止法が注目を集める中、兵庫県職員のパワハラ疑惑を告発した人物が亡くなる悲劇が起きた。

外部相談窓口サービス「日本公益通報サービス」は企業の内部不正・ハラスメントの相談を代行し、通報者のプライバシーを守る。月に数件の相談を受け付け、弁護士によるフィードバックも行う。

具体的な事例を挙げると、新しい職場で年下の管理職からの無視に悩む65歳のAさんの相談があり、施設長に対する通報を経て解決に至った。

会社の窓口には相談しにくくて…ハラスメント相談代行のメリットと「3つの事例」

 厚生労働省は全ての企業に対して、ハラスメント防止対策を義務づけている。大企業に対しては2020年6月、中小企業は22年4月からだ。パワハラ防止法は地方公務員や教職員にも適用されるが(国家公務員は別途人事院規則で規定)、そんな折も折、知事のパワハラ疑惑を告発した兵庫県職員が亡くなってしまった。

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 ハラスメント相談窓口の設置には準備が必要だ。ハラスメント定義の基礎知識を社員に周知してもらうなどの社員教育や被害者が安心して相談できる体制を整えること、通報者が不利益な取り扱いを受けないような秘密保持、さらに問題を追及して対策防止にあたるなど、コンプライアンスを推進するための取り組みが重要視されている。

 とはいえ、社員が通報しにくい環境だったり、コンプライアンス担当者の精神的な負担を軽減したいと考える企業のために、外部相談窓口サービスとして23年3月に企業の内部不正・ハラスメント(パワハラ・セクハラ)の相談窓口、循環取引などの内部通報窓口を代行する「日本公益通報サービス」(本社・横浜市)が誕生した。

 代行の仕組みは契約企業の代わりに、通報者から電話で相談を受けた相談員(心理カウンセラー)が相談内容を整理して、企業のコンプライアンス担当者に報告。報告を受けた企業のコンプライアンス担当者が事実確認の調査を行い、調査が完了すると日本公益通報サービスに結果報告をする。それを通報者に伝えるという流れだ。

 通報者が直接コンプライアンス担当者とやりとりをすることがないため、通報しやすいというメリットがある。

 開始から1年半近く経った今も月に14~15件の相談が寄せられている。相談内容はパワハラ、モラハラ、セクハラ、いじめなどだ。内容を弁護士に監修してもらい、フィードバックもする。

 事例をもとにひもといてみよう。

【事例1】定年退職後の新しい職場で年下の管理職から「無視」

 千葉県内のベッドタウンにある学童保育施設に23年4月から勤務したAさん(65)。元教師であるAさんは定年退職後も教育関係に就きたいと願い、大手教育関係の企業に登録して第二の人生のスタートを切った。

 ところが、やる気をそぎ落とされることが待っていた。

「30代の男性施設長が仕事をくれないんです。挨拶しても口をきいてくれない、仕事の指示を出さない。『話しかけないでくれ』というオーラが出ているので、聞きづらくなって仕事が滞るんです。子供たちが敏感にキャッチして、いらつくのもつらくて……。年上の自分を尊重してくれないこともつらいです」

 通報を受けた相談員がAさんを聞き取りした後、今後の要望を聞いたところ、Aさんは「不満を吐き出すことができてすっきりした」と話したという。自分を無視した施設長に謝罪を求めることはなかった。

 相談員はその企業のコンプライアンス担当に通報すると、当該の30代の施設長は会社から指導を受け、現在も管理者として従事しているという。その後の通報相談はない。

 日本公益通報サービス取締役の三谷剛史氏は次のように話す。

「相談窓口を設けることによって、相談者の心のはけ口ができたと喜ぶ人が増えました。話を聞くことによって、解決につながっていくケースもあります」