ひとはなぜ戦争をするのか「身も蓋もない答え」

AI要約

職場で起こる様々な問題や人間関係に焦点を当てた話題の本『職場を腐らせる人たち』と、物理学者アインシュタインと精神分析家フロイトの往復書簡について述べられている。

本書では、職場を腐らせる人々の心理や行動を豊富な臨床例を通じて解説し、人間関係の大切さを強調している。

アインシュタインとフロイトの往復書簡では、戦争の根本的な理由や人間の攻撃性について深く探求され、戦争や問題解決に至るまでの複雑な心理状態が明らかにされている。

ひとはなぜ戦争をするのか「身も蓋もない答え」

根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち6刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

2023年の最も衝撃的な出来事といえば、イスラム主義組織ハマスによるイスラエルへの越境攻撃に端を発した戦闘だろう。イスラエルもハマスも徹底抗戦の構えを崩さないため、犠牲者の増加に歯止めがかからず、ガザ地区はがれきの山になった。

2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻も泥沼化の様相を呈しており、われわれ人類が21世紀になっても戦争をやめられないのは一体なぜなのかという疑問を抱かずにはいられなかった。

そこで手に取ったのが、物理学者のアインシュタインと精神分析家のフロイトの往復書簡『ひとはなぜ戦争をするのか』である。この往復書簡は、1932年に国際連盟からアインシュタインが「今の文明においてもっとも大事だと思われる事柄を、いちばん意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」と依頼され、相手としてフロイトを選んだことによって始まった。

アインシュタインは「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」というテーマを選び、フロイトに問いかけた。この問いに対して、エロス的欲動と破壊欲動に関する議論を展開した後、フロイトが導き出したのは次のような結論である。

「人間から攻撃的な性質を取り除くなど、できそうにもない!」

身も蓋もない結論で、暗澹たる気持ちになる。これでは答えにならないと思ったのか、フロイトは次のような言葉で結んでいる。

「文化の発展を促せば、戦争の終焉ヘ向けて歩み出すことができる!」

この言葉をアインシュタインはどのように受け止めたのだろうか。翌1933年、アインシュタインはナチスの脅威にさらされてアメリカに亡命し、第二次世界大戦後にプリンストンで死去。フロイトも、1938年にナチスがオーストリアに侵攻したため、ロンドンに亡命し、翌1939年、癌で他界。

二人ともユダヤ人だったものの、亡命したため、ホロコーストの犠牲にはならずにすんだ。当時から、ユダヤ人国家をパレスチナに建設しようとする「シオニズム」はあったようだが、悲願が達成された後にこのような悲惨な戦闘が繰り返されることを、二人は予想していただろうか。

私は悲観論者(ペシミスト)で、何にでも意地悪なまなざしを向ける癖がついている。だから、フロイトの結びの言葉は幻想的願望充足であり、文化がいくら発展しても、人間から攻撃的な性質を取り除くことは難しいのではないかと思わずにはいられない。もちろん、文化の発展を促すことは必要だが、それによって人間の攻撃的な性質がすべて消えてなくなるわけではないだろう。

これは、戦争のような大きな問題だけでなく、不和やもめごとなどの人間関係をめぐるちょっとした問題に対処する際にも、肝に銘じておくべきことである。

それを忘れず、どうすれば実害を減らせるかを常に考えながら、職場を腐らせる人に対処していただきたい。

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。