国民年金の積立が「2059年に無くなる」衝撃試算…それでも納付期間を延長しないヤバさ

AI要約

7月3日に公表された厚生労働省の財政検証結果では、国民年金の収入と給付の割合が改善されたが、将来の積立金枯渇リスクも指摘されている。

財政検証では高成長実現ケースや実質賃金上昇率など、4つの経済成長ケースを想定している。

公的年金の所得代替率が50%を下回らないようにしなければならず、政府が適切な措置を講じることが期待されている。

国民年金の積立が「2059年に無くなる」衝撃試算…それでも納付期間を延長しないヤバさ

 7月3日に公表された今回の財政検証は、前回に比べて、収入に対する年金給付額の割合が改善された。しかし、ある経済成長ケースを想定した場合、国民年金の積立金が枯渇し、年金額の割合が大きく落ち込む予測も出された。政府はそれでも国民年金納付期間延長を行わない方針だが、問題を放置することは許されない。

 7月3日、「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し―令和6(2024)年財政検証結果―」が厚生労働省から公表された。財政検証は年金財政の健全性を確認、点検し、将来の公的年金の給付水準を5年に1度試算するものである。

 経済前提として、次の4つのケースが示されている。

・(1)高成長実現ケース

(2)成長型経済移行・継続ケース

(3)過去30年投影ケース

(4)1人当たりゼロ成長ケース

 各ケースでの経済成長率や実質賃金上昇率の想定は、図1に示すとおりだ。

 4つのケースのうち、(1)高成長実現ケースと(2)成長型経済移行・継続ケースは、日本経済の実態に比べて楽観的すぎると考えられる。それは、実質賃金上昇率を見るとわかる。

 これは、年金財政の収支に大きな影響を与えるのだが、(1)では2.0%、(2)でも1.5%という高い値に設定されている。現実には、実質賃金上昇率はマイナスを続けているのだから、高すぎる。現実的なのは、(3)の「過去30年投影ケース」だろう(実質賃金上昇率は0.5%)。

 財政検証は、これら各ケースにつき、マクロ経済スライドによる給付の抑制がいつまで続くか、「所得代替率(注)」がどの程度にまで低下するかなどを試算している。

注)

公的年金の給付水準を示す指標。現役世代の男性の平均手取り収入額37万円に対する年金額の比率で算出する

 公的年金の水準は、「モデル年金」によって評価される。モデル世帯(会社員の夫と専業主婦の世帯)では、基礎年金と報酬比例年金を受け取る。

 2024年度では、月額22万6,000円だ。この場合の所得代替率は、61.2%だ(図2)。内訳は、基礎年金が36.2%、報酬比例年金が25%となっている。

 モデル世帯が受け取る年金の所得代替率は、50%を下回らないようにすることが法律で約束されている。次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、政府が所要の措置を講じることになっている。