低年金対策なぜ必要?  厚生年金、非正規へ拡大

AI要約

公的年金の健全性を確かめる5年に1度の財政検証結果が公表された。少子高齢化が進む中でも制度を維持するには、年金の伸びを少しずつ抑える「マクロ経済スライド」を長期間実施する必要があると判明。

毎月の年金額は、現在は会社員の夫と専業主婦のモデル世帯で22万6000円。過去30年と同様の経済状況が続いた場合、2057年度まで年金の伸びを抑える措置が実施され、21万1000円になる見通しだ。

現在は基本的に、従業員101人以上(今年10月からは51人以上)の企業で週20時間以上働き、月額賃金が8万8000円以上だと適用される。これまで国民年金に入っていた月収8万8000円の人が厚生年金に10年加入すると、保険料(本人負担分)は月9000円減り、年金額は年5万4000円増える。

 公的年金の健全性を確かめる5年に1度の財政検証結果が公表された。少子高齢化が進む中でも制度を維持するには、年金の伸びを少しずつ抑える「マクロ経済スライド」を長期間実施する必要があると判明。この期間が長引くほど支給額は低くなり、低収入の非正規雇用が長い人は老後の貧困リスクが高まる。来年の制度改正では、低年金対策として、給付の手厚い厚生年金の適用拡大が焦点となる。

 ―将来の年金はどうなるの。

 毎月の年金額は、現在は会社員の夫と専業主婦のモデル世帯で22万6000円。過去30年と同様の経済状況が続いた場合、2057年度まで年金の伸びを抑える措置が実施され、21万1000円になる見通しだ。現役世代の平均手取り収入と比べた水準を表す「所得代替率」は24年度の61.2%に対し、57年度は50.4%へ下がる。

 ―なぜ長期にわたり年金の伸びを抑えるのか。

 今の高齢者が受け取る年金を目減りさせ、その分を将来世代に回すためだ。伸びを抑える期間は、年金財政の収支が均衡するまで続く。ただ、非正規雇用が長い人にとって、年金の目減りが長年続くことは老後への打撃が大きい。年金額が月5万円未満の人もおり、給付水準の改善が必要だ。

 ―具体的な改善策は。

 厚生年金に加入できる非正規・短時間の労働者を増やす案が検討されている。現在は基本的に、従業員101人以上(今年10月からは51人以上)の企業で週20時間以上働き、月額賃金が8万8000円以上だと適用される。これまで国民年金に入っていた月収8万8000円の人が厚生年金に10年加入すると、保険料(本人負担分)は月9000円減り、年金額は年5万4000円増える。

 厚生年金の新規加入者は、企業規模の要件撤廃などで90万人増える。企業規模と賃金の要件撤廃などのケースで200万人増になる。これらの見直しで、モデル世帯の所得代替率はそれぞれ51.3%と51.8%に改善する。週10時間以上働く全ての労働者に厚生年金を適用すると56.3%まで上がり、年金の伸びを抑える措置も38年度に前倒しで終了できる。

 ―企業や国民の負担は。

 厚生年金は保険料の半分を事業主が支払う仕組みだ。小規模企業や個人事業所では、新たに発生する保険料負担分が重荷となりそうだ。事務処理面での課題もある。また、公的年金の1階部分に当たる基礎年金は給付額の半分を国庫で賄うため、給付水準の改善に伴い、追加財源が将来必要となる可能性もある。

 ―制度改正議論の見通しは。

 企業の保険料負担などを考慮すると、厚生年金の適用拡大を一気に進めるのは難しい。短時間労働者の賃金動向などを見極めながら、段階的に企業規模や賃金などの要件を見直すことになりそうだ。