古楽ブーム牽引、トレヴァー・ピックの任期3年延長 紀尾井ホール室内管弦楽団首席指揮者

AI要約

紀尾井ホール室内管弦楽団の首席指揮者の任期延長が決定し、来年にはモーツァルトのオペラを演奏会形式で披露する予定。

指揮者トレヴァー・ピノックはKCOとの関係を信頼し、音楽の探究を楽しんでいる。

人間と人類を祝福するコンサートを通じて、音楽の魅力を共有する使命を感じている。

古楽ブーム牽引、トレヴァー・ピックの任期3年延長 紀尾井ホール室内管弦楽団首席指揮者

紀尾井ホール(東京・紀尾井町)をレジデント(本拠地)として活動する紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)の首席指揮者トレヴァー・ピノックの任期が、2028年3月まで3年間延長された。任期第1期の集大成として来年3月、モーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」を演奏会形式で公演する。ピノックは「このオーケストラは私の思うような音を作ってくれます」と話す。

■メンバーを信頼

KCOは1995年、ホール開館時に紀尾井シンフォニエッタ東京として、初代ミュージック・アドバイザー兼首席指揮者に尾高忠明を迎え発足。2017年に現名称になり、ライナー・ホーネックが首席指揮者に就任した。本番と同じホールで練習もできるという恵まれたオーケストラ。2管編成の小さい室内オーケストラで、年4、5回の定期演奏会を行っている。

ピノックは1946年、イギリス・カンタベリー生まれ。王立音楽院でオルガン、チェンバロを学び、チェンバロ奏者として活動。72年に結成した作曲当時の楽器、演奏法で演奏するピリオド楽器オーケストラ、イングリッシュ・コンサートを結成。バロック音楽を中心に演奏し、70年代から盛んになった古楽ブームを牽引した一人だ。KCOとは2004年に初共演。22年、第3代首席指揮者になった。

「今回の契約延長をうれしく思っています。首席指揮者になってオーケストラとの関係は格段に深まりました。KCOは音楽の飲み込み方や反応がとても早いのです。長年の付き合いで引退した人、新しく来たメンバーもいますが、このプロセスがいいのです。どういう音、音色や音のクオリティーを求めるべきか、一緒に探求し考えます。この仕事の進め方はミステリアスとも言えます。KCOは私の考え方を大事にしてくれます。メンバーを信頼していなければ音楽はできません」と話す。

■人類を祝うコンサート

首席指揮者になるまでに5回共演した。定期演奏会に年2回出演する契約となった22年9月の首席指揮者就任記念コンサートのプログラムはワーグナー「ジークフリート牧歌」、ショパン「ピアノ協奏曲第2番」、シューベルト「交響曲第5番」。以後、モーツァルトの交響曲第35番、メンデルスゾーンの交響的カンタータ(交響曲第2番)「讃歌」、シューマンの交響曲第1番「春」などピノックの個性が反映された曲目が並んでいる。

「すべてのコンサート、一つ一つのコンサートが人間、人類を祝うコンサートでなければならないと思っています。音楽には人間的な感情があふれています。演奏は音符を自由に解き放ってあげるのです。音楽家の使命は音楽という宝物を観客のみなさんと分かち合うことです。音楽の中に共有するという考えが含まれているからです」