美しい花火を音楽で描き出したドビュッシー。その音色に耳を傾けて

AI要約

花火好きの画家、山下清と作曲家ドビュッシーが花火をテーマにした作品について紹介。

山下清の命日を記念して、花火の美しさと人々の心を捉える力について考察。

クラシック音楽と絵画が織り成す、感動と美しさが詰まった世界。

美しい花火を音楽で描き出したドビュッシー。その音色に耳を傾けて

難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。

今日7月12日は、ちぎり絵細工で名高い画家、山下 清(1922~71)の命日です。

“放浪の画家”と称された山下 清が、生涯にわたって描き続けた題材が「花火」でした。花火好きの清は、花火大会開催の噂を聞きつけると全国どこにでも足を運び、その時々の感動を作品に記したことは有名です。

その花火を音楽で描き出した作曲家の1人が、フランス印象主義を代表する作曲家、クロード・ドビュッシー(1862~1918)でした。前奏曲集第2巻の第12曲に収められた『花火』の題材となったのは、1912年7月14日の「革命記念日」に打ち上げられた花火の様子だと伝えられます。

作品の美しさは、情景描写の粋を極めたドビュッシーならでは。遠くの賑わいから始まる音楽は、夜空に炸裂する花火の様子を華やかに描きつつ、はるか遠くから聞こえてくるフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』と重なりながら、静かに締めくくられる名作です。

山下 清がこの風景を見たならば、きっとさらなる名画が誕生したことでしょう。花火が人の心を虜にする力は、古今東西不変です。

一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。