加熱式たばこ、販売10年目で税率論争に着火…シェア4割受け引き上げ案に業界懸念

AI要約

加熱式たばこの販売開始から10年が経過し、健康リスクが低く、愛煙家の間で人気が高まっている。

政府は加熱式たばこの税率引き上げを検討しており、たばこ業界から懸念の声が上がっている。

加熱式たばこは有害成分量の低減が期待され、紙巻きたばこと比べて健康リスクが低いとされている。

加熱式たばこ、販売10年目で税率論争に着火…シェア4割受け引き上げ案に業界懸念

タバコの葉を電気で加熱し、その蒸気を吸う「加熱式たばこ」の販売開始から今年で10年を迎える。紙巻きたばこと比べにおいが少ない上に健康リスクが低い可能性があり、愛煙家の加熱式への移行は年々加速。国内たばこ市場の約4割を占めるようになった。これに対し、政府は割安な加熱式の税率を紙巻きと同率まで引き上げる方針を示しており、たばこ業界側からは懸念の声も上がっている。

「規制面での働きかけと社会からの支援があれば、最大15年以内に紙巻きの販売を段階的に終了できる」

フィリップモリスジャパン(PMJ)でコミュニケーションズ・ディレクターを務めるセシリア・シウ氏は、将来的な加熱式への完全移行について語った。

加熱式は平成26年にPMJが日本で発売。以降、日本たばこ産業(JT)や、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンが後に続き、市場は活発化している。

健康志向の高まりや度重なるたばこ税増税などで喫煙者自体は減少。日本たばこ協会によると、紙巻きの販売数量は平成22年度に2千億本超だったが、令和5年度は878億本まで減った。一方、加熱式は同年度に市場全体の約4割を占める585億本に達した。PMJは、東京都内での加熱式の販売数量が今年1月に紙巻きを上回ったという。

■有害成分は低減?

加熱式の需要が高まる背景には、紙巻きの味わいや吸いごたえを維持しつつ、健康リスクの低減が期待される点が挙げられる。

加熱式はタバコ葉を燃焼させず、加熱することで発生する蒸気を楽しむのが大きな特徴。PMJによると、タバコ葉を燃焼させると発がん性物質を含む約100種類の「有害および有害性成分」(HPHC)が煙として発生するため、疾患の主な要因は燃焼というたばこの吸い方にあるという。同社関連の研究機関によると、加熱式の蒸気は紙巻きの煙と比べ、世界保健機関(WHO)などが指定するHPHCの量が平均90~95%低減されるとした。

JTが平成29年に実施した臨床試験でも、加熱式の使用者が体内に取り込むHPHCの量は、大半の種類でたばこを吸わない禁煙者と同レベルにとどまった。