「もしトラ」なら円高に転じる? 円安が進む?【Q&A】

AI要約

トランプ氏が再選した場合の為替相場の動向について、市場参加者の見解は一致していない。経済政策次第であり、米国経済の強さに応じてドルの動きが変わる可能性がある。

9月FOMCを見据えるならば、夏場にはドル安・円高基調になる可能性があり、政治的中立性を保つために大統領選前の利下げは慎重に検討される。

トランプ氏の為替志向に関しては意見が分かれており、ドル高かドル安かについても見解が割れている。日本に対しては極端な円安・円高を避ける配慮もある。

「もしトラ」なら円高に転じる? 円安が進む?【Q&A】

 今秋の米大統領選でトランプ前大統領が再選した場合を想定する「もしトラ」という言葉が取り沙汰されています。もしトランプ氏が米大統領に返り咲いた場合、為替相場はどう動く可能性があるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストに寄稿してもらいました。

 ドル円が再び160円台に乗せるなど円安が進行しています。11月に米大統領選を控える中、さらなる円安があるのか、それとも円高に転じるのか、大統領選を踏まえつつ考察していきます。

Q:トランプ氏が大統領に再選したら為替(主にドル円)はどうなるでしょうか? 

A.:このテーマに関する市場参加者に共通の認識はありません。結局は経済政策次第であり、米国経済が他地域に対して相対的に強くなるならドル高、弱くなるならドル安と想定しておくべきでしょう。なお本稿では議論の発散を防ぐため、「為替は日米金利差と強い相関が続く」という前提を置いて話を進めます。また米国の利下げは米金利低下に直結し、日米金利差の縮小を招くとして、「米国の利下げ=ドル安」として取り扱います。

Q:現時点で利下げ開始時期の中心的予想は9月FOMC(連邦公開市場委員会)となっています。大統領選前の利下げは政治的中立性から難しいとの見方もあります。Fedはどう考えるでしょうか?

A:大統領選前の利下げは、現政権がインフレ沈静化に成功したとの見方に繋がる他、株価上昇を促すため、現政権(民主党)に有利との見方があります。この点に配慮してFedが中立性を保つのではないかと予想する専門家もいます。もっとも、9月FOMC(17~18日)であれば、大統領選の11月5日までには十分な時間的距離があり、さほど問題にならないとの見方も多くあります。「米国の利下げ=ドル安」を前提にするならば、9月FOMCを見据え、夏場にはドル安・円高基調になっている可能性があります。

Q:トランプ氏はドル高・ドル安のどちらを好むでしょうか?

A:これに対して共通の見方はありません。筆者は6月下旬に米国出張の機会を得たため、現地エコノミストや政治に精通した方々にトランプ前大統領の為替志向を尋ねたところ、答えは見事に五分五分でした。インフレを抑制するためにドル高を選好するという人もいれば、製造業の立て直しが必要となることからドル安を選好するという人もいました。また「為替?いや株価が全て」との回答もありました。また日本に対しては地政学的な重要性が増していることから、極端な円安・円高に陥らないよう米国が配慮するとの声もありました。