6月の日銀短観、大企業製造業改善も非製造業や中小は振るわず 日銀の利上げ判断は難しく

AI要約

大企業製造業の景況感が改善する一方、非製造業は悪化。中小企業も振るわない。急速な円安が業績向上に寄与し、設備投資意欲も高まる。物価高で個人消費は弱含む。

価格転嫁や輸出環境改善により大企業製造業の景況感が好転。企業は設備投資に前向き。物価見通しも上振れ傾向。

個人消費の弱さや非製造業の悪化が懸念される。円安による物価上昇が実質賃金を減少させ、節約志向が続く状況。

6月の日銀短観、大企業製造業改善も非製造業や中小は振るわず 日銀の利上げ判断は難しく

日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感が2四半期ぶりに改善する一方、非製造業は16四半期ぶりに悪化。中小企業も振るわない。急速な円安が輸出企業を中心に業績を押し上げ、設備投資意欲も旺盛だが、物価高で個人消費は弱含んでいる。まだら模様の景況感を前に、日銀が7月末の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るかが注目される。

■価格転嫁や輸出環境改善

「全体としては前向きな結果。日銀が7月に追加利上げに踏み切る可能性はある」。みずほ証券の高瀬智司マーケットエコノミストは6月短観の結果をこう分析する。6月短観では大企業製造業の景況感は全16業種中9業種で改善。原材料費が増えた分の価格転嫁が進み、利益の確保が可能となっていることが伺える。

事業計画の前提となる令和6年度の想定為替レートの平均は1ドル=144円77銭だが、足元は1ドル=161円近辺で推移する。想定よりも円安が進み、輸出環境の改善につながっていることも大企業製造業の景況感改善につながっている。

企業は設備投資にも積極的で、物価見通しも上振れしている。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストも「短観の結果だけを総合的に見れば、先行きの利上げ判断を後押しする材料になる」と分析する。

■個人消費の弱さに懸念

一方で、農林中金総合研究所の南武志理事研究員は円安で輸入コストが増えるによる国内物価への影響を懸念する。南氏は円安が訪日需要を刺激する効果を認めながらも「物価高が実質賃金を目減りさせ、国内は節約志向が強い状態が続いている」とみる。

非製造業の小売や対個人サービスなどの業種は足元で景況感の悪化が目立っている。非製造業は先行きの見通しも軒並み悪化。南氏は、追加利上げには賃上げによる所得増が個人消費増と企業収益の改善につながる好循環の確認が必要として「7月(の利上げ)は難しいだろう」と予測する。

過度な円安をけん制する狙いで、日銀の植田和男総裁は7月会合での追加利上げの可能性について「当然あり得る」と繰り返している。ただ、利上げは企業の借り入れ負担増や変動型の住宅ローン金利上昇にもつながり、景気を冷やすリスクを伴う。円安の負の側面が目立つ中、日銀は経済活動に大きな影響を及ぼす政策金利を巡り、難しい判断を迫られている。(永田岳彦)