インバウンド需要の鈍化と円安・物価高の個人消費打撃で非製造業の景況感が17四半期ぶりに悪化(日銀短観・6月調査):7月金融政策決定会合の展望

AI要約

日本銀行が短観を発表し、企業の景況感に大きな変化は見られなかった。自動車産業に影響を与える認証不正問題による生産減少が懸念されている。一方、円安進行が輸出企業に追い風をもたらし、景況感に改善が見られた。

大企業製造業の業況判断DIは2四半期ぶりの改善を示したが、自動車関連業種では不正問題の影響で悪化が見られた。一方、大企業非製造業では17四半期ぶりに景況感が悪化し、インバウンド需要の鈍化が影響している。

雇用人員判断DIは人手不足の深刻化を反映し、企業の経済活動に逆風が吹いている。中堅・中小企業でも判断DIが大幅に悪化している。

インバウンド需要の鈍化と円安・物価高の個人消費打撃で非製造業の景況感が17四半期ぶりに悪化(日銀短観・6月調査):7月金融政策決定会合の展望

日本銀行は7月1日に短観(6月調査)を発表した。日本銀行の利上げ、円安進行などの環境変化を受けても、企業の景況感には総じて大きな変化は見られなかった。

大企業製造業の業況判断DI(最近)は、前回の11から2ポイント改善し13となった。2四半期ぶりの改善となり、事前予想を幾分上回った。

自動車やその関連業種である鉄鋼の景況感は悪化したが、そこには、6月に浮上した認証不正問題による出荷停止の影響があるだろう。自動車の認証不正問題によって名目GDPは983.7億円減少し、関連業種を含めて生産額は2,440億円減少すると見込まれる(コラム「自動車メーカー認証不正問題の経済への影響」、2024年6月4日)。自動車の先行きの景況感の見通しも悪化しており、同問題が先行き尾を引きことが懸念されている。

他方で、円安進行は輸出型企業の景況感には追い風となった。特に素材業種の景況感改善がけん引する形で、大企業製造業の業況判断DIは改善した。

大企業非製造業の業況判断DI(最近)は、前回比1ポイント悪化し33となった。非製造業の景況感悪化は、実に17四半期ぶりである。前回調査でのDIが1991年以来の高水準であったことから、極めて高い水準の景況感は維持されている。しかし今回の景況感の悪化は、インバウンド需要の影響を含め、新型コロナウイルス問題からの回復という経済の追い風が一巡しつつあることを意味しているだろう。

また、小売、宿泊・飲食サービスの景況感が悪化したことは、インバウンド需要の鈍化と物価高による国内消費の鈍化の影響を反映しているとみられる。

雇用人員判断DIは、人手不足がさらに深刻さを増しており、企業の経済活動、景況感に逆風となっていることを示唆した。雇用人員判断DIは、大企業製造業で前回比1ポイントの悪化、大企業非製造業で2ポイントの悪化となった。先の判断DIについては、中堅・中小企業で大幅悪化となっている。