渋澤健さんが「毎月コツコツ積立投資」を強力に勧める理由

AI要約

新NISA導入により株式投資を始める人が増加しているが、市況の変動に焦る読者も多い。

渋澤健会長は積み立て投資のメリットを語り、市況の変動に慌てず冷静に取り組む姿勢を提案。

インデックス投資の魅力やアクティブ運用の重要性についても言及し、自身の経験を通じてアドバイスを行っている。

渋澤健さんが「毎月コツコツ積立投資」を強力に勧める理由

2024年1月の新NISAを契機に株式投資を始める人が着実に増えている。ただ4月の下落局面、5月以降の”NTTショック”など株価の大きな変動を前に慌ててしまった読者も多いことだろう。そこでコモンズ投信の渋澤健会長に初心者向けのアドバイスを伺った。

■下がるとたくさん買える喜び

――新NISAを機に、ネット証券会社の新規口座開設が活性化。個人投資家が着実に増えています。

新NISAは素晴らしい制度。中でもとくにお勧めしたいのが年間投資枠が120万円に設定されている「つみたて投資枠」です。ぜひ、これに注目してください。

私が積み立て投資が素晴らしいと言っているのは、自分自身の体験から来ています。子どもが生まれた2000年から自分の子どものために積み立てを始めました。2000年、2001年、2002年、2003年、ずっと積み立てましたがITバブルがパーンとはじけたタイミングなので、ずっと下がり基調でした。

下がってる中、毎月積み立てる。金額を一定にしているので、下がるとたくさん買える。今すぐ売ることを想定していないし、子どもが成人になったときに考えてみようかな、という時間軸なので、たくさん買えるのが嬉しい。下がると嬉しい投資ってあるんだ、っていうことを実感したのです。

自分自身がトレーダーやってましたから、相場を見ながら投資をする、という世界があることはよくわかっている。むしろそっちが当たり前と思っていたんだけれども、自分でいざ積立投資をやってみると、これはいいものだな、と感じました。

2005年くらいに底入れして一気に株価は上昇。ところが今度はリーマンショックでパーンとはじけた。その後、上がってきたと思ったら2011年の東日本大震災で一気に下がってしまう。そしてアベノミクス相場から今現在に至っているわけです。

■大きく下げるような時が必ずある

――調整を交えながらも、右肩上がりの相場が続いています。

これからも絶対に下がるし、大きく下げるような時が必ずあります。もうそれは明らかなこと。「コモンズ投信会長が断言!株は絶対に下がる」というふうなタイトルにはしないでいただきたいんですけど(笑)。

長期投資をする中では、絶対に調子が悪いときってあるんですよ。だから、下がることを前提として投資を始めましょう。下がってもジタバタしない。そんな気持ちをもって長期投資に取り組んでください。僕はこれをいつも言っているんです。

コモンズ投信の実績で見てみても、5年間積み立てている顧客は、ほぼ全員が赤字ではない。5年というスパンでは上がって、下がって、上がって、下がってというようなことがありますが、そこで慌てないことが大切です。

――初心者はインデックス投資を選んだほうがよい、という考え方もありますが。

インデックス投資が理にかなっているのは、信託報酬が安いこと。これは間違いなく大きなメリットです。雪だるまを転がしてその中でだんだん積み重なっていくのが複利の特性ですから、信託報酬が安いと大きな効果があるわけです。今回の新NISAブームの中での投資先をみてもオルカン(eMAXIS Slim全世界株式)にかなりのお金が向かっていますね。

それによって円安を引き起こしてると批判する方もいらっしゃいますが、この行動は理にかなってること。資産運用立国とは何かといえば、日本国内だけの発想ではない。成長と分配の好循環ということで資産運用立国を目指すのであれば、好循環をグローバルで回すことが当たり前にならなければいけません。

だから一人一人の国民が世界に投資することによって、それが世界の成長につながり、最後は日本に還元するっていうこの好循環を目指すことが資産運用立国です。

■インデックスファンドは機関投資家向けの商品

――オルカンブームは自然な動きだ、と。

そうなのですが、とはいえ、です。すべてがインデックス投資である必要はないのでは?と思っています。インデックスファンドは個人向けに設計されたものではない。もともと年金などの大手投資家が、あまりに扱っている金額が大きいので、個別ではなくインデックスに任せましょう、ということで設計されている。学術的な研究においても、個別銘柄よりもマーケットのアロケーションこそが大切、ということが書かれている。これは非常に論理的です。

ただ、ほとんどの学術的な文献の起源はアメリカにあり、しかもアメリカのインデックスは、非常に新陳代謝が高い。銘柄の入れ替えが頻繁に行われており、ある意味でアクティブインデックスといえるものです。だからインデックスファンドの魅力はあるわけです。

――日本はそうではない?

代表的な指標である日経平均を見ると、入れ替えが非常に少ない。もちろん30年前と比べると、ファーストリテイリング(9983)、ソフトバンクグループ(9984)、東京エレクトロン(8035)などがぐっと上がってきていますが、文字通りの古株が非常に多い。日本のインデックスはそれほど新陳代謝が高くないので、魅力が落ちます。

もう一つは、やはり資産運用立国を目指すということなので、もう少しアクティブに投資先を選びたい。これはコーポレートガバナンス改革を継続的に進めていくうえでも大切です。インデックス投資には投資先選びの主体性がないので、政府が進めてきたコーポレートガバナンス改革に逆行すると思うんですね。

もちろん間接的には個別株に出資しているのですが、意識としてはインデックスへの投資。アクティブ運用型の投資信託の場合、アセットマネージャーはコーポレートガバナンスに目を光らせて投資先を選びますが、インデックスファンドの場合は、コーポレートガバナンスの主体性がわかりずらいです。

■大切なことは「可視化」

コーポレートガバナンス改革の大事なエッセンスは、「アセットオーナーが調べることはできないことも、プロであるアセットマネージャーがやってくださいね」ということです。インデックスにどんどんお金が流れちゃうと、主体性を持っていないお金が何兆円も毎月株式市場に入ってくることになる。これはちょっと弊害が起きそうです。資産運用立国という構想はとてもよいことなので、ちゃんとそこは整理をする必要があると思います。

我々が2008年にコモンズ投信を立ち上げたときには、最初から一般個人の方々にどのように長期投資に向き合っていただけるかを考えました。大切なことは「可視化」です。それと投資先との対話。あなたのお金がどういう会社に投資されているのか、そしてその会社がどのような価値を生み出しているのか、そうしたことを可視化できるようにする。こうしたアクティブファンドの役割も重要だと思っています。

――初心者の皆さんも、ぜひ個別株にチャレンジしてほしいですよね。

毎月コツコツ積み立てるビギナー初心者であっても、可視化に意識している投資信託を通じてちょっと株式市場に向き合えば、「どの会社がよさそうか」っていうことはわかると思うんですよね。個別株への投資の基本を学ぶことはそんなに難しいことではない。

その基本を個人投資家に理解してもらうために、セミナーなどを積極的に開催するアクティブ運用型の投資信託は、コモンズ投信だけではありません。長期的な視点で、株式投資を自分の生活に楽しく取り込んでほしいと思います。

(東洋経済 記者)

 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。