元ブラックロックCIO率いる東大基金、オルタナ投資6割で勝機探る

AI要約

福島毅氏率いる東京大学の寄付金運用基金がオルタナティブ資産への投資を強化。特にプライベート・デット投資に注力。

福島氏の目標はリターンの積み増し。プライベート・デット投資を増やし、円ベース債券を減らす方針。

大学基金の重要性が高まっており、米国の大学基金事例も紹介。東大も収入増加を追求する。

(ブルームバーグ): 元ブラックロック・ジャパン最高投資責任者(CIO)の福島毅氏が率いる東京大学の寄付金運用基金は、株式や債券以外のオルタナティブ(代替)資産への投資に大きくかじを切った。中でも、銀行以外の主体が投資家から集めた資金を融資の形で貸し出す「プライベート・デット」投資を軸に、運用益の積み増しを狙う。

ブラックロックのCIOを約7年間務めた福島氏は2023年4月、東大のCIOに就任。東大は福島氏を迎えた同年1月から、基金の運用目標の引き上げと資産配分比率の見直しに踏み切った。オルタナティブ投資を従来の20%から60%へと大幅に引き上げる一方、円ベース債券の比率を引き下げた。

福島氏が運用に当たって注目するのが、代替資産投資の一つでもあるプライベート・デットだ。ブルームバーグの取材に応じた福島氏は「目標リターンを達成する上で必要な投資」とした上で、昨年4月に残高がゼロだったのを足元では約55億円まで増やしたことを明らかにした。

プライベート・デットは変動金利型が一般的で、インフレや金利上昇によって投資家のリターンが損なわれにくい特色がある。足元では米国などの短期金利が高く、福島氏は「これを享受できるというのがメリットの一つ」と説明する。現在は海外企業を対象とした3本のファンドに投資している。

東大などの大学が資金運用に注力するのは、必ずしも芳しいとは言えない懐事情が関係している。国立大学協会は6月の声明で、国からの運営費交付金が減額された状況が続いていると指摘した上で、大学の財務状況は「もう限界」と訴えた。国際競争力を高めるための研究資金を確保するには、運用などを通じて大学自ら収入を増やす創意工夫が求められる。

米国では長い歴史を持つ大学基金もあり、同国の高等教育機関で最大規模を誇るハーバード大基金は約400年前に設立された。23年度の基金の評価額は507億ドル(約8兆円)に上る。基金からの分配金は毎年同大の歳入の3分の1以上を占めており、単一の収入源としては最大という。同大基金も未公開株式やヘッジファンドなどの代替資産で全体の75%を運用する。