ノーベル経済学者ジョセフ・スティグリッツ「米中対立が起きているのは、米国が中国の強さを認めたくないからだ」

AI要約

ジョセフ・スティグリッツは、非対称情報の影響を探求し、米国の経済システムと政治イデオロギーを分析している。

彼は自由市場に左翼的に批判し続けてきたが、現在の政治状況においてその見解が浸透している。

スティグリッツは現在も進化を遂げ、インフレ率や貿易ルールについての見方を提供し続けている。

ノーベル経済学者ジョセフ・スティグリッツ「米中対立が起きているのは、米国が中国の強さを認めたくないからだ」

非対称情報のもたらす影響を探求し、2001年にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ。

米国で4月に新著『自由への道─経済学と良い社会』(未邦訳)を出版し、現在の米国の経済システムと、それを生んだ政治イデオロギーを分析した。米国はどう間違えたのか、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が聞いた。

ジョセフ・スティグリッツから話を聞く前に、彼のチームの一員から、何を質問しようとしているのか聞かれた。ノーベル経済学賞受賞者は、準備を大切にしているのだ。スティグリッツの批評家たちは、「過去30年間、何を準備してきたのか」と笑うかもしれない。彼は自由市場について左翼的に批判してきたが、それはいまでは自然なものになったのだろうか。

スティグリッツは、1995~97年にビル・クリントン政権下の大統領経済諮問委員会委員長を務め、1997~2000年に世界銀行のチーフエコノミストを務めた。

その後、2002年にベストセラーとなった著書『グローバリゼーションとその不満』でIMF主導のグローバル経済を批判し、一躍有名になった。英紙「エコノミスト」からは酷評されたが、彼は多くの左派に賞賛された。

変化したこともある。81歳になったスティグリッツは、ようやく時代の先端を走っていると感じている。彼は貿易ルールに懐疑的だったが、その見方はいま、民主・共和両党の間で当然のものとなっている。「2000年のグローバリゼーションに関する私の主張は、いま世界のものになりました」。彼はその場で思いついたかのように、陽気にそう語る。IMFでさえも彼の批評を受け入れている。

ジョー・バイデン米大統領の政策は労働者寄りで、大きな政府を志向する。その方向性はスティグリッツも支持している。インフレ率が下がっていることからも、彼はその正当性を主張する。スティグリッツは、物価上昇はサプライチェーンの問題に対する「一過性」の反応であると主張してきた。2023年11月、そう訴えてきた経済学者たちを代表するかのように、彼は「勝利の凱旋」について書いた。

「金利を3%、3.5%、4%に正常化する以外に何もしなくても、インフレ率はいまとほとんど変わらなかったでしょう」。米国の3月の米国消費者物価指数(CPI)は予想をわずかに上回った。

「月ごとに変動するのは避けられません。しかし、インフレは一過性と考える私たちが予測したように、インフレ率は劇的に低下しました。異なる主張をしてきた経済学者たちはインフレ抑制のためには失業率の上昇は避けられないと言いましたが、そんな必要はありませんでした」