このタイミングでの欧州三国による「パレスチナ承認」は決して意味がないわけではない

AI要約

ヨーロッパのスペイン、ノルウェー、アイルランド政府がパレスチナを国家承認し、イスラエルとハマスを牽制する狙いがある。

パレスチナの国家承認はアッバス大統領率いる自治政府を正統な政府とするが、自治政府には問題点もあり国際社会の注目を集める。

イスラエルは承認に反対し、ネタニヤフ政権の孤立を招く可能性が高く、一方で野党は政権への反発が高まっている。

このタイミングでの欧州三国による「パレスチナ承認」は決して意味がないわけではない

5月22日、スペイン、ノルウェー、アイルランドの各政府がパレスチナを国家承認すると表明した。

英紙「ガーディアン」によると、スペインの首相は「二国家解決の可能性を武力で破壊することは許さない」と述べた。

ノルウェーの首相は「平和で安全な二つの国家が隣り合って共存するという選択肢を存続させなければならない」と述べた。

そしてアイルランドの首相は、パレスチナの国家存続の権利を認めることは「ハマスのニヒリズムに代わる実行可能な選択肢がある」というメッセージになると語った。

いずれの国にも、長引くガザ地区における戦闘と、パレスチナの民間人の被害を受けて、二国家解決の道を断とうとしているイスラエルとハマスを牽制する狙いがあるとみられる。

米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、パレスチナを国家承認している国はすでに約140あり、今回の三国の追加は、ヨルダン川西岸とガザの人々に直接の影響を及ぼすものではない。

しかし、今回加わった三国がいずれも欧州の国であることは、西側におけるネタニヤフ政権と米国の孤立を一層際立たせるだろうとガーディアンは書く。

ここから、さらに承認の流れが進む可能性もある。ガーディアンは、英国もパレスチナ承認の検討をほのめかしていると報じている。

パレスチナの国家承認は、アッバス大統領率いるパレスチナ自治政府を正統な政府とするものだ。しかし、長らく選挙をおこなっておらず、汚職も絶えないといわれる自治政府はパレスチナ国民の信任を得ているとはいえず、実際にハマスのような過激派を抑え込めてもいない。

そのため、国際社会に承認されるほど、自治政府に厳しい目が向けられる可能性もある。だがその反面、自治権を有するという意識を持ったパレスチナの市民社会が、内側から国を改革しようとするかもしれないとガーディアンは指摘する。

イスラエルは、与野党ともに三国のパレスチナ承認を受け入れられないとしている。だが同時に野党は、こうした動きを誘発して国際社会における孤立を加速させたのはネタニヤフの政策の完全なる失敗だと批判しており、政権への反発がますます高まることは間違いない。