台湾・頼清徳政権に偽情報攻撃 「日米と組んで『独立』図る」 認知戦拡大を専門家ら警戒

AI要約

台湾の頼清徳政権が中国の偽情報にさらされ、台湾独立の噂や日本との関係に対する不信感が広がっている。

頼氏が旭日旗を背に演説したという偽情報が拡散されたが、実際は部隊章のデザインだった。

米下院議員の支持表明を偽動画で拡散するなど、中国は台湾政権への不信感を煽るための工作を行っている。

台湾・頼清徳政権に偽情報攻撃 「日米と組んで『独立』図る」 認知戦拡大を専門家ら警戒

5月に発足した台湾の頼清徳政権が、日本や米国との関係を巡る「偽情報」にさらされている。主に中国系の交流サイト(SNS)で発信されており、中国による「認知戦」とみられる。内容としては、頼総統が「台湾独立」を図り、中国の武力行使を招くといった趣旨で政権への不信感をあおるものが目立つ。実在の画像を利用するなど手口は従来よりも巧妙化しており、台湾の専門家らは警戒を強めている。

■頼氏が旭日旗を背に演説?

頼氏は8月23日、中国大陸に近い離島、金門島で、中台が武力衝突した第2次台湾海峡危機から66年の追悼式典に出席し、台湾防衛について演説した。ネット上にはその直後、演壇の後ろに「日本軍旗(旭日旗)」が掲げられていたとの情報が拡散した。

非営利団体「台湾事実査核中心(台湾ファクトチェックセンター)」は4日後に「偽情報」と断定した。

実際に頼氏の後ろに掲げられていたのは金門島の駐留部隊の部隊章。台湾が「国旗」とする青天白日旗(通称)に灯台から広がる光線をあしらったデザインだ。

偽情報は、部隊章の光線の部分が旭日旗のように見えることを悪用した。頼氏の背後にあった旗について、青天白日旗に旭日旗の模様を組み合わせたものだと虚偽の説明を付して誤解を広めた。「親日派」とされる頼氏の評価に便乗した偽情報だった。

台湾ファクトチェックセンターの邱家宜執行長は偽情報の狙いについて、「頼政権は日米と組んで『台湾独立』を図っている」と印象付け、中国の武力行使を恐れる台湾人の頼政権への不信感をあおろうとしたと分析する。

■米下院議員の動画を加工

今年1月の総統選を控えていた昨年末には、米下院軍事委員会の副委員長が台湾の与党・民主進歩党への支持を表明したとする偽動画が中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などで拡散した。この偽動画では、副委員長が「米国は台湾により多くの武器を売却し、米軍が台湾の訓練に参加する」などと語ったことになっていた。

台湾ファクトチェックセンターによると、動画は人工知能(AI)の音声とディープフェイク技術で加工され、真偽の検証は容易ではなかった。だが、動画投稿サイト「ユーチューブ」で、副委員長が2022年にエネルギー高騰対策について語っていた元の映像を発見し、それが加工されていたことを突き止めた。