安倍から岸田へ「米国に見捨てられる恐怖」対する中国「黙ってない」

AI要約

安倍政権時代に始まり、岸田内閣で敵基地攻撃能力の解禁が行われた日本の軍事政策の経緯を紹介。

日本が米国に依存する軍事体制を維持する理由や、米国の戦略的見地からの懸念について述べられている。

米国が中国との武力紛争で中国本土への攻撃を避ける戦略を提唱し、その戦略が日本に与える影響について考察。安全保障政策の転換の背景にある安倍首相の思考を明かす。

安倍から岸田へ「米国に見捨てられる恐怖」対する中国「黙ってない」

知らぬ間に「米国のミサイル基地」と化していた日本

日本にとっての「最悪のシナリオ」とは?

政府による巧妙な「ウソ」とは一体…?

国際情勢が混迷を極める「いま」、知っておきたい日米安全保障の「衝撃の裏側」が、『従属の代償 日米軍事一体化の真実』で明らかになる。

※本記事は布施祐仁『従属の代償 日米軍事一体化の真実』から抜粋・編集したものです。

最初に中距離ミサイルの導入を決めたのは、安倍晋三首相の時でした(2018年)。安倍は、敵基地攻撃を目的とするものではないと明言していました。

「スタンドオフミサイルは、我が国の防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を確保しつつ、我が国の安全を確保するものであり、敵基地攻撃を目的とするものではありません。(中略)いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存しており、今後とも、こうした日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていません」(2019年5月16日、衆議院本会議)

ところが、安倍は2020年9月に首相を退任する直前、「(周辺国の弾道ミサイルの脅威に対して)迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことが出来るのか」と問いかけ、敵基地攻撃能力の保有を政府として検討していく談話を突然発表したのです。

さらに首相退任後には、「安倍政権において、スタンド・オフ・ミサイルという形で、具体的な能力については保持した。この能力を打撃力、反撃能力としても行使できるようにしていくことが求められている」と発言しました(2021年11月20日に開かれた日本協議会・日本青年協議会結成50周年記念大会で)。

最終的に敵基地攻撃能力保有の解禁に踏み切ったのは岸田内閣ですが、その先鞭を付けたのは安倍だったのです。

実は、安倍はかねてより、敵基地攻撃能力の保有を解禁すべきだと考えていました。根っこにあったのは、米国に「見捨てられる恐怖」です。

日米同盟の下で、日本はこれまで防御という「盾」の役割に徹し、敵基地攻撃という「矛」の役割は米国に委ねてきました。しかし、いざという時に米国がこの「矛」を使ってくれないのではないかという懸念があったのです。

特に相手が中国や北朝鮮のような核保有国の場合、全面的な核戦争にエスカレートするのを避けるため、米国が相手国の領域内に攻撃を加えるのを躊躇(ちゅうちょ)するのではないかと考えられていました。

実際、米国にはそのように主張する人たちがいます。

たとえば、米国防大学国家戦略研究所のトーマス・ハメス上席研究員(元海兵隊大佐)は2012年に「オフショア・コントロール」という戦略を提唱します。

この中でハメスは、中国との武力紛争が発生した場合、米国は核戦争へのエスカレートを避けるために中国本土への攻撃は行うべきではないと主張します。

代わりに、中国海軍を第一列島線の内側(東シナ海と南シナ海)に封じ込め、遠距離経済封鎖で経済的に中国を疲弊させることで現状変更を断念させて戦争を終結させる構想を提案しました。

この戦略では、日本は一方的に中国の攻撃を受け、耐える事態を覚悟せざるを得ません。