知ってはいけない、世界の《残酷な常識》「脱原発社会」のウラで、日本メディアが報じない「環境NGO」のヤバすぎる実態

AI要約

ドイツにおける巨大組織「環境NGO」の実態について、強力な影響力を持つ1100万人の会員を擁するNGOが環境政策に大きく関与していることが明らかになっている。

環境NGOは脱原発や脱石炭などの政策に大きく介入し、政治の中枢にまで浸透している。政治決定に影響を与え、世論形成をリードしているNGOの影響力が顕著である。

環境NGOの活動によって、ドイツでは緑の党が政権入りし、2038年までに脱石炭を実現する方針が打ち出されるなど、環境保護運動が政治に大きな影響を及ぼしている。

知ってはいけない、世界の《残酷な常識》「脱原発社会」のウラで、日本メディアが報じない「環境NGO」のヤバすぎる実態

一般に、巨悪に立ち向かう弱小な組織といったイメージを持たれる「環境NGO」。だが、実際は強大な権力と潤沢な資金で世界の政治を動かしている恐ろしい組織なのである。

ドイツは石炭をベースに発展してきた国で、電力発電はその4割を石炭と褐炭に頼っている。そんなドイツで、「環境NGO」はドイツ全土に分布している。

登録されている会員はなんと1100万人。その巨大組織の圧力で、国は「脱原発」を決め、さらには「2038年の脱石炭」を決めている。恐ろしいことに今や「環境NGO」はドイツの世論形成を牛耳る一大勢力となっているのだ。

ドイツ在住のベストセラー作家・川口マーン惠美氏が青山学院大学教授・福井義高氏を相手に巨大組織「環境NGO」のドイツにおける実態を語る。

※本記事は、『優しい日本人が気づかない 残酷な世界の本音―移民・難民で苦しむ欧州から、宇露戦争、ハマス奇襲まで』より一部を抜粋編集したものです。

川口マーン惠美(以下川口):緑の党のロベルト・ハーベックが大臣の経済・気候保護省では、2023年4月になって、NGOとの異常な癒着や、関係機関での大掛かりな縁故採用がスキャンダルとして報じられました。

主要メディアはあたかも今、初めて明るみに出たかのように報道しましたが、もちろん、彼らは前々からすべて知っていた。私だって知っていたのですから当然です。

「過小評価されるグリーン・ロビーの権力」という長大な論考が独大手紙『ディ・ヴェルト』のオンライン版に載ったのは2021年4月30日でした。

綿密な取材の跡が感じられる素晴らしい論文で、読んだとき、私は久しぶりにジャーナリズムの底力を感じたものです。

巨悪に立ち向かう弱小な組織といったイメージの環境NGO(非政府組織)が、実は世界的ネットワークを持ち、政治の中枢に浸透し、強大な権力と潤沢な資金で政治を動かしている実態、多くの公金がNGOに注ぎ込まれている現状、そして、批判精神を捨て、政府とNGOを力強く後押しするメディアの癒着を暴いているのです。

この論文によると、環境NGOは地味な草の根運動を装っていますが、エネルギー政策、および地球温暖化防止政策に与える影響力という意味では、今や産業ロビーを遥かに凌いでいるといいます。脱原発や、脱炭素にも、もちろんNGOが絡んでいます。

そこでまず脱原発について私が異常だと思ったのは、2011年の福島第一原発の事故の後にドイツ政府は倫理委員会を招集したのですが、そのメンバーに電力会社の代表や研究者がほとんどおらず、聖職者や社会学者が加わっていたことです。

つまり、科学的視点を欠いた人たちが2022年の脱原発を決めたのです。しかも音頭を取ったのが、長年、国連環境計画の事務局長を務めていた環境問題の大御所、クラウス・テプファーでしたから、結果ありきの脱原発でした。もちろん、テプファーを引っ張ってきたのはメルケル首相です。

また、その7年後の2018年に、脱石炭について審議するために招集された「成長・構造改革・雇用委員会」(通称・石炭委員会)では、聖職者はいなくなっていましたが、今度は環境NGOがたくさん座っていた。

おかしいでしょう、彼らが大事な政策決定に口を出せるなんて!しかも、脱石炭を審議する会議なのに、石炭輸入組合の代表は傍聴することさえ叶わなかったのです。

ドイツは伝統的に石炭をベースに発展してきた国で、発電は今も4割を石炭と褐炭に頼っているのに、長年続いたこの産業構造を、突然トップダウンで終了させるのは、ものすごく無謀な話です。

性急な脱石炭は、企業の株主の権利を侵害するし、また、何万もの炭鉱や関連業種の労働者から生活の糧をも奪うことになります。

そこで石炭委員会は各方面への補償と、影響を受ける州の産業構造改革のため、2038年までに少なくとも400億ユーロを投下するとしました。

大盤振る舞いはいいとして、財源はどうするのか。代替産業もわからぬまま山積する問題をほっぽり出して“遅くとも”2038年の脱石炭というスケジュールだけが決まっているのが、現在のドイツです。

しかし、それに反対したのが緑の党で、なぜ、反対かというと、2038年では遅すぎるので、スケジュールをもっと早めろと異議を唱えたのです。そして、それを後押ししているのが自然・環境NGOです。

これらのNGOはドイツ全土にあり、登録されている1100万人の会員が、今やドイツの世論形成を牛耳る一大勢力となっています。

実際、緑の党はNGOを味方につけ、脱炭素の大波に乗って2021年12月に政権入りを果たしました。

福井義高(以下福井):少なくともドイツの場合、環境保護というのはもともと左翼の専売特許というわけではなく、19世紀のドイツ・ロマン主義あるいはもっと先まで遡れる、保守的な人にも訴求力のあるテーマです。

したがって、緑の党を支えるドイツの環境保護運動は、日本のような上っ面なものではなく、ドイツ社会に根を下ろしているように思えます。