日産と日本旅行など異業種14社、環境配慮型の旅を販売する「GREEN JOURNEY」発足 冨永愛さんやムーミンがサステナブルな旅の魅力をアピール

AI要約

日産自動車と日本旅行を含む14社が共同体"GREEN JOURNEY"を設立し、サステナブルな旅行ツアーを提供開始。

地域ごとに環境保全型のアクティビティやグルメを提供し、2033年までに全国200エリア、1000万人以上へ拡大予定。

熊本阿蘇と伊勢志摩での初のツアー提供で、環境に配慮しつつ地域のサステイナビリティを目指す。冨永愛さんも体験を通じてGREEN JOURNEYを称賛。

日産と日本旅行など異業種14社、環境配慮型の旅を販売する「GREEN JOURNEY」発足 冨永愛さんやムーミンがサステナブルな旅の魅力をアピール

 日産自動車と日本旅行など異業種14社は8月20日、観光業におけるCO2排出を削減し、地域の課題解決を目指すサステナブルな旅を提供する異業種の企業による共同体「GREEN JOURNEY」を発足させ、同日から2つの国内旅行ツアーの予約販売を開始した。

 GREEN JOURNEYは日産と日本旅行の2社が発起人となり、JRグループ(北海道旅客鉄道、東日本旅客鉄道、東海旅客鉄道、西日本旅客鉄道、四国旅客鉄道、九州旅客鉄道、日本貨物鉄道)とEarth hacks、地球の歩き方、おてつたび、TBWA HAKUHODO、日本ジオパークネットワークの14社が参加するサステナブルツーリズムの共同体。全国の地域と協力して旅行者に環境や地域のサステナビリティにつながる旅行ツアーを提供することで、日本の旅行・観光産業におけるサステナビリティを加速させていく取り組みとなる。

 現時点では旅先として熊本県阿蘇市、三重県志摩市の2エリアと提携。2033年までに旅先を全国200エリアまで拡大し、延べ利用者数を1000万人以上に増やす計画となっている。

 第1弾として予約販売がスタートした「GREEN JOURNEY熊本阿蘇」「GREEN JOURNEY伊勢志摩」では、環境に優しい移動手段としてBEV(バッテリ電気自動車)のレンタカーを移動手段として利用。地域ごとに行なわれる環境保全型のアクティビティやグルメの提供、LINEのプラットフォームを活用するスタンプラリー機能でゲーム要素を組み込み「旅行を楽しむだけでサステナブルにも貢献できる」という新しい旅を実現している。

 同日には東京都港区の東京ミッドタウン ホールAで発足発表会が行なわれ、モデルの冨永愛さんやムーミンをスペシャルゲストに迎えたトークセッションが実施された。

■ サステナブルツーリズム実現には業界の垣根を越えた協力が不可欠

 発足発表会では最初に、日産自動車 常務執行役員 日本マーケティング&セールス担当 神田昌明氏と日本旅行 代表取締役社長 小谷野悦光氏がステージに登壇して、GREEN JOURNEY設立の背景と目的について説明を行なった。

 日産の神田常務執行役員は「日産では2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げており、EVの普及を通じたゼロエミッション社会を目指して取り組んでおります。EV販売台数13年連続ナンバーワンという日本のEV市場におけるリーディングカンパニーとして、魅力的なEVのラインアップでわくわくする走りを皆さまにお届けしております。例えば2022年からこれまで3回に渡り実施した、EVオーナーのカーライフをより充実させるEVオーナー優遇施策プロジェクトの『GREEN PASS』のほか、日本が抱える地球温暖化や災害対策などの課題を解決するための『ブルー・スイッチ』を2018年5月から実施しています」。

「こうした取り組みを続けるなかで着目したのが観光産業です。昨今は『エコツーリズム』などの環境を意識した旅が注目されていますが、観光と観光産業が排出するCO2は世界のCO2排出量の約8%~11%と大変大きな割合を占めており、その大部分が移動で発生していることを知りました。そこで、長きにわたってお客さまのお出かけや旅に寄り添ってきた私たちが発起人となり、新しいサステナブルツーリズムの実現を目指してGREEN JOURNEYの発足に至りました」。

「サステナブルツーリズムの実現にはさまざまな課題があり、観光従事者だけでは解決できず、業界の垣根を越えた協力が不可欠です。そこでこのたび、多くの企業さまに賛同をいただき、さらに環境省さまの推進する『デコ活応援隊』や東北大学との連携のもと、国内旅行におけるCO2排出量の削減および環境保全型アクティビティの開発、地域文化の維持を目的に、サステナブルを採り入れた新しい旅を本日発表しております」と述べ、GREEN JOURNEY設立の意義などを説明した。

 日本旅行の小谷野社長は「私どもも業界に先駆け、2021年にJ-クレジットを活用したカーボンオフセット商品の販売に着手しております。昨今はようやくサステナブルツーリズムのツアーも増加してきておりますが、まだまだ日本国内では一般化していないのが現状です。その一方で、アフターコロナや円安の影響で国内の観光需要は高まっており、今こそ課題に向き合ってサステナブルな旅行のスタンダード化を図るため、具体的なアクションプランを実行に移す必要があると考えております」。

「また、観光産業を持続・発展させるためには、地域の人手不足、2次交通不足、さらに人口減少やコロナ禍で難しくなった文化産業などの維持など、解決すべきさまざまな課題がございます。環境に配慮するだけでなく、地域への貢献も含めてわれわれ旅行業界で何かできないかと考えていたところ、日産自動車の神田さんから本プロジェクトのお話しをいただきました」と旅行業界を取り巻く現在の環境について紹介し、具体的なアクションとして日産とともにGREEN JOURNEYの発起人になった経緯について語った。

■ ゲストの冨永愛さんがGREEN JOURNEYを疑似体験

 神田常務と小谷野社長のプレゼンテーションに続いて行なわれたトークセッションでは、ゲスト参加した冨永愛さんが事前にレンタカーとなる日産のBEV「リーフ」に試乗し、旅行中に味わえる現地の“サステナブルなグルメ”を試食。また、このステージ上で神田常務執行役員と日本旅行 事業共創推進本部 チーフマネージャー 椎葉隆介氏からツアー内容について解説され、現地で用意される体験アクティビティ「CONNECT PROGRAM」の機材などに触れることでGREEN JOURNEYの参加第1号になる疑似ツアーが実施された。

 まず、旅の第一歩として利用することになる日産BEVのレンタカーについて、神田常務執行役員はBEVは環境に優しいだけでなく、走行中の車内が非常に静かで、旅行中の車内で会話も弾む点をアピール。冨永さんもリーフに試乗したときのことを「本当に静かで、アクセルを踏むとすーっと発進するので、クルマを超えた乗り物という気分でした」と、初めてBEVを運転した感想を口にした。また、神田常務執行役員はGREEN JOURNEYは無理や我慢をすることなく、環境に優しく地域に貢献しながらとことん楽しめる旅になっていることがポイントだと説明している。

 同日から予約販売を開始した2種類のツアーについては、椎葉チーフマネージャーが紹介パネルを使いながら説明。「旅と言えば、やっぱり食べ物ですよね」と力説する冨永さんに合わせ、阿蘇市と志摩市で味わえるおいしくてサステナブルなグルメについて紹介した。

 伊勢志摩と言えば伊勢エビやあわびが有名だが、GREEN JOURNEY伊勢志摩ではこれまで廃棄されることが多かった「アカモク」や低利用魚の「ウツボ」「アイゴ」を使ったメニューをツアーの「連携レストラン」で提供する。冨永さんもこの日の昼食としてカツオを使った「アカモク丼」を食べており、アカモクはカツオや卵黄との相性もよくペロッと平らげてしまったと感想を語った。

 また、ウツボやアイゴは市場流通しておらず、水揚げされた地域以外ではほとんど食べられていない水産物となっているが、近年志摩市では黒潮の蛇行によって潮流が変化し、ウツボやアイゴといった低利用魚の水揚げ量が増加していることからメニュー開発が推進されているという。

 GREEN JOURNEY熊本阿蘇で連携レストランで楽しめるのは、阿蘇地域にある草原に放牧されて育つ「あか牛」と呼ばれる和牛を使ったメニュー。あか牛は生後8か月~14か月で出荷されるまで、草原に生えている草を毎日40kgほど食べて育つことから草原の保全に役立り、あか牛の肉100gに付き4.5畳分の草原が保全される計算になるという。「あか牛丼」と「あか牛のハンバーグ」を試食した感想を冨永さんは「おいしかったですね~! 柔らかくて」とコメントした。

 GREEN JOURNEYならではの取り組みとして新たに開発された体験アクティビティのCONNECT PROGRAMは、日本旅行としてもこれまでさまざまなアクティビティを展開して楽しんでもらってきたが、これらは旅行中に参加して終わりという内容となっていた。しかし、CONNECT PROGRAMでは地域と旅行者がつながることで地域のサステイナビリティを実現することを目指し、産業や文化の発展・継承を実現しつつ、旅行者にとってその旅先が“第二の故郷”になることも目指すアクティビティだと椎葉チーフマネージャーは紹介。

 GREEN JOURNEY伊勢志摩で体験できるCONNECT PROGRAMとしては、「次世代の牡蠣養殖体験」と「伝統文化を守るきんこ芋づくり」の2種類があり、会場では実際の牡蠣養殖で使用する養殖カゴと養殖で育った牡蠣、牡蠣の稚貝などをステージ上に展示。冨永さんは指の爪ほどの小さな稚貝がわずか10か月で大きく育つ牡蠣の力強さに歓声を上げていた。

 なお、CONNECT PROGRAMでは稚貝の手入れから滅菌工程という一連の流れを体験。最後は海洋廃棄物を利用した自分のネームタグを養殖カゴに取り付け、自分が体験した証を残せるようにするという。今後は旅行後に利用してもらうためのLINEアプリを開発して、CONNECT PROGRAMの体験先であるホストから養殖した牡蠣の成長過程や地域の情報などを動画や画像によって参加者に提供。牡蠣が育っていく10か月を一緒に見守れる仕組みを構築して、旅行後も旅先とつながる体験になることを目指していく。

■ 「楽しみながらサステナブルなことができる」と冨永さん

 GREEN JOURNEYの疑似ツアー終了後に実施されたトークセッションの後半では、冨永さんの旅行に関するエピソードが語られた。

 コロナ禍後は旅行先がほとんど国内となっており、新潟に行く機会が多くなっているほか、自身の出身地である神奈川県相模原市にあるキャンプ場で自然を楽しむこともあると言う。自然の中に身を置くことで心が満たされたり、都会暮らしの目まぐるしい日常で忙しくなった心を落ち着く時間を持つことで、仕事にも励むことができると最近になって感じていると説明。

 また、先ほどの疑似ツアーを体験して実際にGREEN JOURNEYで出かけたいと感じており、旅行を楽しみに行った先でサステナブルな体験が自然にできるGREEN JOURNEYは非常にありがたいツアーになっていて、楽しみながらサステナブルなことができるというところは大事なことだと感想を口にした。

 このほか冨永さんが旅行に必ず持っていく、これから持っていきたいと考えているお薦めのアイテム3種類も紹介。1つめは長時間屋外にいても直射日光を遮れる帽子、2つめは新幹線や飛行機などの利用中にくつろぐためのノイズキャンセリングヘッドフォン、3つめはまだ使ったことはないが、以前にキャンプをしたときに欲しいと感じて手に入れたばかりの双眼鏡が披露された。