トイレと同じ石鹸で身体を…イランで「スパイ」が投獄される刑務所の「ヤバすぎる衛生環境」

AI要約

イランでは思想犯・政治犯として逮捕されると、過酷な拷問が行われる実態が明らかになっている。

ナルゲス・モハンマディが獄中からその状況を証言し、2023年にノーベル平和賞を受賞した。

イラン系英国人のナザニン・ザガリ=ラトクリフが違法逮捕され、イラン政府による拷問を受けた事例が紹介されている。

トイレと同じ石鹸で身体を…イランで「スパイ」が投獄される刑務所の「ヤバすぎる衛生環境」

イランでは「好きなことを言って、好きな服を着たい!」と言うだけで思想犯・政治犯として逮捕され、脅迫、鞭打ち、性的虐待、自由を奪う過酷な拷問が浴びせられる。2023年にイランの獄中でノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマディがその実態を赤裸々に告発した。

上司の反対を押し切って担当編集者が日本での刊行を目指したのは、自由への闘いを「他人事」にしないため。ジェンダーギャップ指数が先進国最下位、宗教にも疎い日本人だからこそ、世界はつながっていて、いまなお闘っている人がいることを実感してほしい。

世界16カ国で緊急出版が予定されている話題作『白い拷問』の日本語版刊行に先駆けて、内容を一部抜粋、紹介する。

『白い拷問』連載第14回

『怖がる幼い娘にまで…罪を認めさせるためには手段を選ばないイラン政府の「鬼畜の所業」』より続く

語り手:ナザニン・ザガリ=ラトクリフ

ナザニン・ザガリ=ラトクリフ(1978年テヘラン生まれ)はイラン系英国人で、2016年4月に2週間の旅行の予定でイランを訪問した。しかし帰国するときにイランの空港で身柄を拘束された。逮捕時、ナザニンは乳幼児の娘、ギスーと一緒だった。警察は幼い娘を彼女の両親に預け、彼女のパスポートを没収し、スパイ容疑で逮捕した。判決は5年の禁固刑で、彼女はケルマン刑務所ののち、エヴィーン刑務所に移送された。彼女の夫リチャードと、彼女が勤務するトムソン・ロイター財団は起訴内容を全て否定した。イラン政府は長年イギリスから回収できずにいた債権を回収するために、ナザニンを人質にして監禁していた。

――ケルマン刑務所はどんなところでしたか?独房に入れられていたのですか?

ケルマン中央刑務所には、だいたい420人の女性囚人がいます。当時、隔離された房は1部屋だけで、420人の囚人とそれ以外、というくくりしかありませんでした。私は初めてその隔離房に入れられた人間でした。隔離房には、丈夫な鉄の錠前がついた分厚い鉄扉があって、鍵は開いていたことがなく、のぞき窓がはめこまれていました。