最高潮の集会、響いた破裂音 トランプ氏銃撃、そのとき何が?現場リポート

AI要約

トランプ前大統領が銃撃された選挙集会でパニック状態が発生。銃撃音と混乱した状況が描かれる。

選挙集会の様子や厳戒態勢、演説開始前の会場の雰囲気が詳細に記述されている。

ステージに向かって銃声が響き、支持者らが混乱に陥る中、一部の聴衆がパニック状態になった様子が描かれている。

最高潮の集会、響いた破裂音 トランプ氏銃撃、そのとき何が?現場リポート

 7月13日午後6時10分過ぎだった。ステージに向かって左側から「パン!パン!」と乾いた破裂音が5~6回聞こえた。

 「発砲だ」「けが人が出ている」-。共和党のトランプ前大統領が銃撃された米ペンシルベニア州バトラーの選挙集会会場。トランプ氏が右耳を負傷し、聴衆にも死傷者が出て悲鳴が上がる。しかし、ステージや前方の様子が見えない会場後方からは事態を把握できず、周囲にいる聴衆らは混乱状態に陥った。会場の前方にいた目撃者から断片的に情報が入ってくる。ただ事ではない事態が感じられ緊張が走り、聴衆の一部は出口へと駆け出した。(時事通信ワシントン支局 板橋一浩)

◇まるで野外ライブ会場の中で

 筆者は、別の取材でペンシルベニア州を訪れたついでに、トランプ氏の勢いや支持者の様子を見ておきたいと思い、13日の選挙集会を訪ねた。記者席はステージに近い会場前方に設けられていたが、今回は聴衆の一人として、ステージから遠く離れた会場後方の芝生に座って演説開始を待った。

 トランプ氏の選挙集会は、帽子やTシャツ、マグカップなどのグッズやハンバーガー、かき氷などを売る出店が立ち並び、いつもロックバンドの野外ライブ会場のような雰囲気になる。

 この日の開場は午後1時。「トランプ2024」と書かれたプラカードを手にしたり、共和党カラーの赤いシャツに身を包んだりした支持者が続々と集まり、その数は数千人に達したとみられる。赤ん坊を抱いた家族連れや若いカップルも多い。会場の大画面にポップスやジャズのライブ映像が流れる中、支持者らは思い思いに雰囲気を楽しんでいた。焼き菓子のプレッツェルを売っていた男性は「多くの人が集まった。トランプ氏は偉大だ」とうれしそうに話していた。

 ただ、会場入り口は厳戒態勢が敷かれていた。かばんやポーチの持ち込みは禁止。空港の保安検査場のように、集会参加者は全員、警察官から持ち物検査を受け、金属探知機のゲートをくぐらなければならない。ペットボトルなどの液体はすべて没収され、会場内でミネラルウォーターを配る徹底ぶりだ。

◇無差別乱射?パニックに

 トランプ氏の演説は午後6時過ぎに始まった。発砲はその5~6分後ごろだった。トランプ氏の登壇は予定よりも1時間ほど遅れたが、それだけに会場は盛り上がっており、演説が始まるとすぐに雰囲気が最高潮に達した。突如、銃声らしき音が複数回響いた。

 演説を聴いていた支持者は総立ちだったため、ステージから数十メートル離れた会場の後方からは、壇上の様子をうかがうことはできない。前方にいる聴衆のどよめきやバタバタとした音だけが聞こえる。周囲の支持者たちも「何が起きた?」と口々に言いながら、状況を確認しようと必死に背伸びしていた。

 「爆竹でも鳴らしたのか」。会場となったバトラーの街中では、少ないとはいえ民主党支持の旗を立てた家や車も目にしていた。このため筆者も「『反トランプ派』による嫌がらせ?」などと考えていた。隣にいた男性と目が合うと、彼も首をすくめ、何が起きたのか分からない様子だった。

 何とか写真だけは撮ろうと、アイフォーンを片手に前方に移動しようとした瞬間だった。後ろから警察官らしきスーツ姿の男性が前方に向かって猛スピードで駆け出した。会場左側から「発砲だ!」との声が聞こえると、雰囲気が一変した。

 「けが人がいる」「トランプが倒れた」などの叫び声が聞こえ、断片的な情報が飛び交った。トランプ氏を狙った銃撃なのか、無差別乱射なのかはまだ分からない。

 後方にいた一部の聴衆が出口に向かって走り始めると、現場は一気にパニック状態に。筆者もかつて取材した乱射事件現場のシーンが頭をよぎり、いったん出口の方向に向かった。泣き出した若い女性を抱えるようにして走る男性もいた。出口付近では女性が座り込み、動けなくなっていた。