中国産として世界に輸出される、巨大な北朝鮮の「つけまつげ」ビジネス が、もたらす膨大な外貨

AI要約

北朝鮮からの人毛を使用したつけまつげやかつらが、中国を経由して日本や韓国、欧米に出荷されている可能性がある。

北朝鮮と中国の間で行われる人毛製品の取引は、国連制裁の対象外であり、北朝鮮政府に収益をもたらしている可能性がある。

一部メーカーは、北朝鮮の労働者が製品の生産に関与している可能性があり、国際的な制約や禁止を受けるリスクがある。

中国産として世界に輸出される、巨大な北朝鮮の「つけまつげ」ビジネス が、もたらす膨大な外貨

近くの店舗に並ぶ、つけまつげや、かつらは、もしかすると北朝鮮産かもしれない。英紙「ガーディアン」は、人毛が北朝鮮の重要な外貨獲得源になっていると報じている。

北朝鮮にとって中国は最大の貿易相手だが、対中輸出の60%をつけまつげ、ひげ、かつらなどの人毛製品が占める。中国の税関データによると、2023年の輸出量は1680トンで、その金額は約1億6700万ドル(約270億円)にもなる。これらの製品が中国で最終加工されて包装され、「中国製」として、日本や韓国、欧米諸国に販売されているというのだ。

「ロイター」通信によると、世界のつけまつげの約70%が中国山東省の平度市で生産されている。そして、同市のまつげ工場の約80%が、北朝鮮からつけまつげの原材料や半製品を購入しているという。しかし、その事実は伏せられ、完成したまつげは中国製として出荷されている。

北朝鮮の賃金は低く、中国のわずか10分の1ほどとされる。しかし、同国で作られるつけまつげの品質は高いため、中国メーカーからも好まれているようだ。ガーディアンによると、中国から輸入された毛髪が北朝鮮で加工され、再び中国に戻されて輸出されるケースもある。

2006年以来、国連安全保障理事会は北朝鮮の核兵器開発計画を阻止するため、数々の制裁措置を科してきた。石炭、繊維、石油などの製品の貿易は制限されているが、毛髪製品や美容製品を製造するような軽工業は制裁の対象にはなっていない。

一方、日本では北朝鮮を原産地とする製品、あるいは同国から出荷されるすべての貨物の輸入を禁止している。さらに、米メディア「ボイス・オブ・アメリカ」によると、米国は、北朝鮮の労働者が関与している製品には、強制労働の疑いがあるとし、北朝鮮の商品やサービスの輸入を実質的に禁止している。

2019年、カリフォルニアを拠点とする米エルフコスメティクスは、北朝鮮から材料を調達した中国のサプライヤーから400万ドル以上のつけまつげを輸入していたことが判明した。規制に違反したとして、同社は約100万ドルを支払っている。

米国は、金正恩政権を利する取引を禁じているが、この人毛取引が政権を潤わせている可能性も指摘されている。

経済制裁に詳しい韓国の弁護士シン・トンチャンは、「北朝鮮がこのまつ毛取引で毎月得ている数百万ドルは、金正恩政権のために使われていると考えるしかない」とロイターに述べている。

今後、つけまつげやかつらを購入する場合には、その製造地やプロセスに気をつける必要があるかもしれない。