英刑務所の収容能力が限界寸前、スターマー新政権に早速試練

AI要約

英国の受刑者数が刑務所収容可能数を上回る状況で、犯罪厳罰化や新設施設の不足が深刻化している。

刑務所では受刑者2人が1室に収容される状況や急遽出所させる緊急措置が取られており、運営団体は混乱や制約を懸念している。

スターマー首相は政策の乏しさを指摘しつつ、刑務所整備に向けた対策が必要であると認識している。

英刑務所の収容能力が限界寸前、スターマー新政権に早速試練

Elizabeth Piper David Milliken

[ロンドン 10日 ロイター] - 英国では近いうちに受刑者が刑務所の収容可能数を上回りそうだが、早急に打てる有効な手立ては見当たらず、スターマー新政権は早速試練を迎えている。

英国は単位人口当たりの受刑者数が欧州でも最も多く、犯罪厳罰化の流れに伴って生じる受刑者の増大に刑務所の新設が追いついていないことが、足元の危機的状況をもたらした。

既に多くの受刑者は一室に二人が収容され、スナク前政権は一部の受刑者の刑期を早めて出所させたり、公判手続きを引き延ばして新たな受刑者の発生を抑えたりする緊急的な措置も講じた。

刑務所運営団体のトップは、抜本的な解決策を見つけなければ、間もなく犯罪者を警察施設に拘置し続けざるを得なくなり、職員の行動が制約されるほか、司法制度全般にも混乱を招くと警告している。

こうした刑務所収容力の不足についてスターマー首相は、前政権の失策だと批判しているものの、対策を講じるための財源は乏しい。あるシンクタンクの試算では、刑務所整備関連の歳出は、向こう数年で需要に比べて毎年5.9%減少するという。

一方刑務所運営団体からは、受刑者の過剰状態で何とか安全に収容するのも限界に近づいているとの悲鳴が聞かれる。

7月5日時点でイングランドとウェールズの受刑者数は8万7453人と、前年同期の8万6035人から増加。刑務所側は最大収容可能人数を8万8864人とみている。

英国の人口10万人当たりの受刑者は約144人。フランスやスペイン、イタリアの受刑者はこれより25%少ないし、ドイツとオランダは半分未満だ。

とりあえず可能な対策としては、犯罪者に位置情報確認装置をつけて釈放したり、被告人に執行猶予判決を下したりすることが挙げられている。

スターマー氏もこの問題への対応を約束しているが、時間が必要だとくぎを刺した。総選挙で労働党が大勝した後初めて行った会見では「一夜で解決はできない。だから受刑者の早期出所を止めると宣言するのは不可能だ」と語った。