「総選挙日程を当てる賭博容疑」で関係者が調査されるなど保守党はボロボロ…「ブレグジットの悪夢」で混乱するイギリスで14年ぶりに誕生した労働党政権が目指す「EUへの再加盟」

AI要約

英国で先週の木曜日(7月4日、現地時間)、総選挙が実施され、キア・スターマー党首が率いる労働党が412議席を獲得する圧勝を果たした。保守党の失政が勝利につながったが、スターマー氏の中道左派路線も支持を集めた。

労働党政権はEUとの関係修復や気候変動対策に取り組むことが予想される。EU復帰を支持する声も高まっており、将来的な展望も注目されている。

ブレグジット後の混乱や保守党の失政が長らく続き、英国政治の不安定さが浮き彫りになっている。

「総選挙日程を当てる賭博容疑」で関係者が調査されるなど保守党はボロボロ…「ブレグジットの悪夢」で混乱するイギリスで14年ぶりに誕生した労働党政権が目指す「EUへの再加盟」

英国で先週の木曜日(7月4日、現地時間)、総選挙が実施され、キア・スターマー党首が率いる労働党が、99%の議席が確定した翌5日午後1時現在で、定数(650議席)の3分の2に迫る412議席を獲得する圧勝を果たした。同5日午後には、チャールズ国王がバッキンガム宮殿でスターマー氏に組閣を要請し、14年ぶりとなる労働党内閣が正式に発足したのである。

今回の労働党圧勝の背景にあったのは、ライバル保守党の数年越しの度重なる失政だ。党派別の得票率を見ると、圧勝した割に、労働党のそれは33.7%と前回総選挙(2019年)に比べてわずか1.6ポイントしか増えていない。対照的に、保守党の得票率は実に前回比で20ポイントも落ち込んで23.7%にとどまった。保守党は獲得議席数でも121議席と1834年の結党以来の最少記録に沈んでいる。こうしたことから、労働党の大勝の最大の要因は、保守党が完膚なきまでに国民から愛想をつかされたことの賜物と断じざるを得ない。

ただ、2020年に党首に就任したスターマー氏が、それまでの急進左派路線を転換し、中道左派政党への衣替えを推し進めていたことが、保守党に失望した有権者の受け皿となった側面は評価すべきだろう。

こうした中で、謙虚さが売りのスターマー党首は、破綻状態の公的医療や学校教育の再建のほか、スナク前保守党政権が5年先延ばししたガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁じる時期を元の2030年に戻すなど気候変動対策にも力を入れることを選挙公約に掲げてきた。

が、もう一つ。国際政治の観点から見逃せないのが、EU議会やフランス議会の下院選挙、そして「もしトラ」が現実味を増す米国の米大統領選挙などと大きく異なり、英国では自国第一主義を掲げる極右政党ではなく、伝統的な穏健左派政党が政権の受け皿に躍り出たことである。

付言すれば、スターマー政権は当面、ブレグジットで悪化したEUとの関係の修復を目指し、新たな通商協定を締結する道を模索すると見る向きは多い。しかし、英国内の最近の世論調査で英国のEU復帰を支持する意見が過半数を占めており、最終的には、英国がEUに復帰する可能性も大方の見方より大きいということも言えるのかもしれない。

振り返ると、保守党政権は惨憺たる状況で、過去14年間に、5人の首相が次々と政権を投げ出す始末だった。英国民ならずとも、目を覆いたくなるような失政と混迷の繰り返しだったのである。

混乱の発端は、2016年に実施したブレグジットの是非を問う国民投票だ。投票率が71.8%と高率になる中で、離脱支持が51.9%と残留支持の48.1%を上回り、残留を標榜していた当時のキャメロン首相が「離脱に向けては、新しい指導部が必要だ」と辞任する事態を招いてしまった。

そもそも、EUの標榜する自由貿易は、モノ・サービスだけでなく、マネーやヒトも自由に国境を行き来することを保障するというものだ。このため、ポーランド系の移民など低賃金で働く労働力の流入が拡大し、英国人の労働者は、仕事にありつきにくく、ありつけても賃金が安いという不満が渦巻いていた。そうした中で、国民投票という賭けを強行したキャメロン氏の判断の甘さを問う声も出たが、すべては後の祭りだった。