共和党がトランプ氏の政策綱領を承認 「内向き」鮮明、日米同盟など言及せず

AI要約

共和党全国委員会がトランプ前大統領の政策集を新綱領として承認

新綱領では国境管理の厳格化や経済強化、外交政策の視点が強調

過去の綱領と比較して、特定の外交政策課題への言及が削除された

共和党がトランプ氏の政策綱領を承認 「内向き」鮮明、日米同盟など言及せず

【ワシントン=大内清】11月の米大統領選に向け、共和党全国委員会(RNC)は8日、トランプ前大統領の政策集を党の綱領として承認した。強硬な不法移民対策や経済の脱中国依存を打ち出す半面、台湾問題やロシアによるウクライナ侵略、北朝鮮情勢などへの直接の言及はなかった。北朝鮮による日本人拉致問題や、中国・新疆ウイグル自治区をはじめとする各地の人権問題にも触れず、トランプ氏が初当選した2016年大統領選で同党が採択した綱領に比べ「内向き志向」が大幅に強まった。

■国境管理の厳格化を主張

新綱領は、トランプ氏が候補者指名を受ける今月15~18日の党全国大会で、正式に採択される見通し。

米メディアによると、新綱領にはトランプ氏が自ら執筆・編集に関与。これまでの大統領選では、16年は党主導で綱領が作成され、20年は綱領が発表されていないことから、今回はトランプ氏とその陣営が初めて主体的に策定したものとなる。新綱領は16ページで、約60ページだった16年綱領より大幅に少ない分量となった。

新綱領は、米国が「深刻な衰退」に直面しているとした上で、看板政策として国境管理の厳格化や不法移民の大量送還を主張。インフレを克服し、経済を強化するために、積極的な原油の採掘を行うほか、大規模な減税、年金制度の維持、製造業・農業の保護などを掲げた。

外交・安全保障では、「同盟国による共同防衛への投資の義務を確かなものとし、欧州の平和を取り戻すことで同盟を強化する」と主張している。

■個別の対外政策に触れず

ただ、ロシアやウクライナ情勢、中国による威圧が続く台湾や東・南シナ海などの個別の課題には触れておらず、16年綱領には記載されていた、日米同盟や北大西洋条約機構(NATO)との連携への言及も削除された。

16年綱領は、14年のロシアによるクリミア併合やウクライナ東部紛争などを念頭に、ロシアの「力による領土変更は容認しない」とし、台湾を「民主主義、人権、自由経済、法の支配の価値を共有する人々として称賛する」などと記載。中国についても、急速な軍拡や新疆ウイグル自治区、チベット自治区、香港などでの人権侵害を厳しく批判していた。だが、新綱領では「力を通じた平和」をうたいつつもこれらの表現が姿を消し、対外政策への関心の薄さを改めて露呈した。