「ウクライナ侵略を考える~『大国』の視線を超えて」著者、加藤直樹氏に聞く(2) 日本の平和運動の無自覚な「大国主義」

AI要約

ウクライナ市民がロシア軍のミサイル攻撃に直面する中、加藤直樹氏は日本の平和主義・反戦運動が侵略というテーマに十分に向き合ってこなかったことを指摘している。

著書にはリベラル系社会運動や平和運動の陥った「大国主義」についても言及し、日本の近現代史における植民地化の反省や認識不足が問題であると述べている。

加藤氏は、ウクライナがNATO加盟を求める背景にはロシアの侵略行為があり、被害を受けた小国が軍事同盟を求めるのは当然で、その対応を非難するのは誤りだと主張している。

「ウクライナ侵略を考える~『大国』の視線を超えて」著者、加藤直樹氏に聞く(2) 日本の平和運動の無自覚な「大国主義」

ロシア軍の侵攻のなか、絶え間ないミサイル攻撃に直面するウクライナ市民。『ウクライナ侵略を考える 「大国」の視線を超えて』(あけび書房)の著者、加藤直樹氏は、「侵略というテーマに日本の平和主義・反戦運動は向き合ってこなかった」と指摘する。何が問題なのか。加藤氏に聞く。インタビュー全4回 2/4 (聞き手:玉本英子・アジアプレス)

●「ウクライナ侵攻を招いたのはアメリカの介入やNATO拡大路線が原因」という論調が日本のリベラル系言論人や左翼系潮流によく見られます。加藤さんの著書には、リベラル系社会運動・平和運動が陥った「大国主義」という表現があります。そこでは、日本の近現代史においてアジア諸国に権益を広げるなかで植民地化していったことへの反省や認識不足、それを総括してこなかったとも指摘しています。日本の近現代史をめぐる歴史認識のなかで、何が欠如していたのでしょうか。

加藤直樹氏:

ウクライナ政府がNATO加盟に名乗りを上げたこと自体はもっと前ですが、ウクライナでNATO加盟を求める世論が大きくなり、本格的にNATOに接近し始めたのは2014年以降です。その理由は、ロシア軍を投入してウクライナの一部を切り取ったクリミア併合と、民兵や正規軍が送り込まれた東部への軍事介入です。ウクライナ初代大統領のクラフチュークは「私たちがNATO加盟を目指すのは、ロシアが侵略国だからだ。…力で勝るロシアからウクライナは逃れようとしている」と語っています(真野森作『ルポ・プーチンの戦争』・筑摩選書)。

要するに先に侵略被害があったのです。私は軍事同盟というものをいいとは思いませんが、大国に侵略された小国が軍事同盟に助けを求めることを、小国の側の外交の失敗、あるいは大国への「挑発」であるかのように非難するのは間違っています。圧倒的な強者による加害の原因を、弱者、被害者の対応のまずさに求めるべきではありません。