1.5京円に及ぶ債務問題 各国政府が迫られる厳しい決断

AI要約

各国政府は前例のない91兆ドルの負債を抱えており、生活水準に対する脅威が増している。政治家はこの問題を無視し、増税や歳出削減について有権者に話そうとしていない。

投資家や専門家は債務負担の増大を懸念し、フランスなどの国では政治的混乱により国債利回りが上昇している。

債務返済コストの増加は公共サービスや経済成長に影響を与え、政府の借り入れが困難になる可能性がある。政治家は痛みを伴う調整を避けており、重要な決断を先送りしている。

1.5京円に及ぶ債務問題 各国政府が迫られる厳しい決断

ロンドン(CNN) 各国政府は前例のない91兆ドル(約1京4700兆円)の負債を抱えている。これは世界経済にほぼ匹敵する規模で、最終的には国民に甚大な負担を強いることになる。

債務負担は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)のコストもあって膨れ上がり、米国を含む裕福な経済圏でさえ生活水準に対する脅威は増している。

一方で、世界中で選挙が行われている今年、政治家たちはこの問題をおおむね無視し、巨額の借り入れに対処するための増税や歳出削減について有権者に率直に話そうとはしていない。場合によっては、少なくともインフレを再燃させ、新たな金融危機を引き起こす可能性のある浪費を公約してさえいる。

国際通貨基金(IMF)は先週、米国の「慢性的な財政赤字」は「早急に対処」しなければならないと改めて警鐘を鳴らした。投資家は、長期にわたる米政府の財政状況について長らく不安を抱いてきた。

世界最大の資産運用会社の一つであるバンガードで格付け部門のグローバル責任者を務めるロジャー・ハラム氏はCNNに「(一方で)赤字が続き、債務負担が増大しているために(今や)中期的な懸念のほうが高まっている」と語った。

世界中で債務負担が膨らむ中、投資家は不安を募らせている。フランスでは政治的混乱により同国の債務に対する懸念が高まり、債券利回り、つまり投資家が求める収益が急上昇している。

6月30日に行われた総選挙の1回目の投票は、市場が恐れる最悪の事態の一部は回避できる可能性を示唆した。しかし、差し迫った金融危機の不安はなくても、支出が膨らみ、税収が不足する中、投資家は多くの政府の債券を購入するにあたり、より高い利回りを要求している。

債務返済コストの上昇は、重要な公共サービスや金融崩壊、パンデミック、戦争などの危機に対処するための資金が減ることを意味する。

国債の利回りは住宅ローンなどの他の債務の価格設定に使われるため、利回りの上昇は家計や企業の借り入れコストの上昇も意味し、経済成長を損なう。

金利が上昇すると民間投資は減少し、政府は景気後退に対処するための借り入れが難しくなる。

米財務省の元チーフエコノミストで現在は米ハーバード大学公共政策大学院(ケネディスクール)の教授であるカレン・ダイナン氏は、米国の債務問題に取り組むには、増税か、社会保障や健康保険制度などの給付の削減が必要になると話す。「多く(の政治家)はこれから下される難しい選択について話すことを望んでいない。これらは非常に重大な決断であり、人々の生活に大きな影響を及ぼす可能性がある」

ハーバード大学の経済学教授ケネス・ロゴフ氏も、米国や他の国々が痛みを伴う調整をしなければならないことに同意している。

同氏はCNNに、債務は「もはや無料ではない」と語った。

「2010年代には、多くの学者、政策立案者、中央銀行家が金利は永遠にゼロに近いままだろうという見解に至り、その後、借金はただでできると考えるようになった」(ロゴフ氏)

「それは常に間違っていた。なぜなら、政府債務は変動金利の住宅ローンを保有しているようなもので、金利が急激に上昇すれば利払いは大幅に増加するからだ。そして、まさにそれが世界中で起きているのだ」(ロゴフ氏)