「ウクライナ侵略を考える~『大国』の視線を超えて」著者、加藤直樹氏に聞く(3)ウクライナ市民への想像力を

AI要約

日本のリベラル系言論人や左翼系運動は、アメリカやイスラエルに批判的である一方、ウクライナ問題でのロシア批判のトーンが低いことについて、加藤直樹氏が指摘。彼は、ウクライナ市民の視点が欠如していると批判し、平和運動や市民運動での批判や支持を受けていると述べている。

この現象について、加藤氏は、反米のイデオロギーや岸田政権への反発心情、平和主義などが影響している可能性を指摘。日本にいる立場で見ると、これらの要因がロシア批判を抑制する要因になっていると述べている。

加藤氏が提唱する立場は賛否両論ありつつも、伝えるべきメッセージがあると感じており、それに基づいて講演なども行っている。

「ウクライナ侵略を考える~『大国』の視線を超えて」著者、加藤直樹氏に聞く(3)ウクライナ市民への想像力を

人権に敏感なはずの日本のリベラル系言論人、左翼運動諸潮流は、アメリカのイラク侵攻やイスラエルのガザ攻撃を批判しても、ウクライナを侵攻したロシアへのトーンが低い。そうした中でリベラル系言論人が提起する「即時停戦論」について、加藤直樹氏は、当事者であるウクライナ市民の視点が欠けていると批判。過酷な状況にある人びとに思いを巡らせて、と呼びかける。インタビュー全4回 3/4 (聞き手:玉本英子・アジアプレス)

●加藤さんがウクライナ問題への議論をリベラル系言論人や左翼系運動に提起したとき、これまで様々な現場でともに意見を交わし、あるいはヘイトスピーチなどの課題に対し、共闘してきた仲間とのあいだに、加藤さんとの軋轢や対立が生じたり、批判を向けらたりするようなことは起きたでしょうか? 

加藤直樹氏:

同世代の親しい仲間や昔からの友人たち、以前から強く信頼している人たちのあいだでは、賛同してくれる声の方が多かったです。それはとても嬉しかった。批判の声は、人づてに聞こえてくるか、ネットで書き込んでいるものでしか触れる機会がないのですが、今のところ、「加藤はネオコンになった」といった、私の議論の内容を理解した上での批判になっていないものばかりです。

もちろん、市民運動、平和運動のなかで、私の本で批判している言説に同調している人は少なくありません。有名なリベラル系、左派系知識人などの中にもたくさんいる。なので、いろんな人を批判する、こういう本を書けば、多くの人に敬遠されるだろうことは理解していました。ただ、思っていたほどではなかったです。運動にかかわる人たちのあいだにも、「侵略を擁護する議論は何かがおかしい」と思いながら、その「おかしさ」を言葉でうまく説明できないでいた人たちがいたようです。平和運動、市民運動の団体から講演の依頼も受けています。

●人権に敏感なはずの日本のリベラル系言論人や左翼系運動が、アメリカのイラク侵攻やイスラエルのガザ攻撃を批判しても、ウクライナ問題ではロシア批判のトーンが低いのはなぜなのでしょうか。反米のイデオロギーがまず来てしまったり、「ロシア批判=ゼレンスキー支持・アメリカ支持・岸田政権支持」という方程式があったりするからでしょうか。

加藤氏:

心情的には、そういう「方程式」はあると思います。日本にいて、目の前の岸田政権だけを見て、それに反発する心情を素朴に発すれば、そうなるでしょう。また、先に触れたような、「抵抗の暴力」であっても軍隊や銃の撃ち合いといったことを認めたくないという心情平和主義もあるでしょう。