【社説】対ロ外交に失敗した韓国政府、さらに緊張高めるカードを切るのか

AI要約

韓国とロシアの緊張が高まる中、高度な精密兵器の提供に関して警告が発せられた。

朝ロ条約の締結後、韓国政府は外交戦略の失敗を認め、対ロシア外交の強化が求められている。

今後の対ロシア外交では、強硬な姿勢と穏健な戦略を組み合わせる必要がある。

 大統領室のチャン・ホジン国家安保室長は23日、「ロシアが北朝鮮に高度な精密兵器を提供するなら、(韓国のウクライナに対する)兵器支援の組み合わせは変わるだろう」と述べた。殺傷兵器を支援する可能性に言及したのだ。北朝鮮とロシアの「包括的戦略パートナー関係条約」(朝ロ条約)締結後、韓国とロシアは相次いで強硬な発言をおこなって緊張を高めている。今は不必要な神経戦を繰り広げるのではなく、新たに展開される韓ロ関係の平和的共存戦略をしっかりと確立していくべき時だ。

 チャン室長はこの日、韓国放送(KBS)の番組「日曜診断ライブ」に出演し、「ウクライナ戦争後に韓ロ関係を復元、発展させたければ、ロシアは熟慮すべきだ」としつつ、上のように述べた。政府はロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の首脳会談後に、「武力侵攻された際の軍事援助の提供」などが含まれる朝ロ条約の締結を糾弾しつつ、20日に「ウクライナへの兵器支援の再検討」方針を表明している。これにプーチン大統領は、超精密兵器を北朝鮮に供給する可能性を直ちに示唆するなど、強く反発した。これに対して、外交部が21日に駐韓ロシア大使を呼んだのに続き、23日にはチャン室長がさらなる警告をしたのだ。

 ロシアの北朝鮮への核・ミサイル技術の移転または超精密兵器の提供は、韓国政府にとっては容認しえないものだ。しかし、今のような公開の場での口頭警告の乱発が、それを防ぐために果たしてどれほど有効だろうか。

 今回の朝ロ条約の締結は、外交惨事に近い対ロシア外交の失敗だ。ウクライナ戦争以降、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は米国一辺倒の外交で対ロシア外交を事実上放置していた。今回の朝ロ条約締結には、新冷戦構図が大きな影響を及ぼしている。だから完全に尹錫悦政権の責任だとはいえないが、韓国政府がこのような結果が出るまで何の制御もできなかったということは明らかだ。対ロ外交によって朝ロ条約の内容を弱められなかっただけでなく、会談後には条約内容もきちんと把握できず右往左往する姿をさらした。かと思えば、今度は対ロシア外交の失敗をウクライナへの兵器支援カードで破綻にまで至らしめようとしているのか。

 来月に米国で行われる北大西洋条約機構(NATO)の会議で、朝ロ問題は重要な論議対象となるだろう。その解決策を「韓米日の軍事的強化」によって朝鮮半島の緊張をさらに高める方にばかり向けることはしないでほしい。それは韓国の国益には何ら役立たない。ロシアに対しては強硬な戦略と穏健な戦略を同時に駆使しつつ、周辺国との関係も考慮するという、高度な外交力を発揮すべき時だ。

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