「2024年朝ロ条約、尹錫悦政権の韓米同盟の『鏡像』」

AI要約

金正恩国務委員長とプーチン大統領が署名した2024年条約は、朝鮮半島の有事にロシアの軍事介入を可能にし、北朝鮮の軍事支援も含む重要な提携を確立した。

条約には、自動介入ではなく事前協議を行う「二重の緩衝装置」が備わっており、国際法に基づいた裁定が行われる仕組みが導入されている。

これにより、朝ロ関係は事実上の同盟関係に移行し、これまでの外交政策を再考する必要性が浮き彫りになっている。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が19日に平壌(ピョンヤン)で署名した朝ロ「包括的戦略パートナー関係条約」(2024年条約)は、朝鮮半島での有事の際にロシアの軍事介入を可能にする「制度的通路」だ。同時に「ロシア・ウクライナ戦争」が西側との全面戦争に拡大する場合、北朝鮮の軍事的支援と介入を可能にする通路でもある。

 前文と23条で構成されたこの条約には、金委員長とプーチン大統領が朝ロ関係を軍事同盟を含む「価値・包括・戦略同盟」に発展させるという意志が込められている。問題はこの条約によって、1990年9月30日の韓ロ国交樹立後の南北ロの三角関係と東北アジアの安全保障の均衡に重大な変化が避けられなくなったという事実だ。

 少なからぬ専門家らが、朝鮮半島の有事の際にロシアの軍事介入が可能になった点に注目し、「2024年条約」を冷戦期の1961年の朝ロ同盟条約の「自動介入」条項の復活とみなしている。しかし、何の前提もなく「すみやかにすべての手段による軍事的援助を提供する」と明記した「1961年条約」とは違い、2024年条約では第3条と第4条に「二重の緩衝装置」がかけられている。軍事介入の根拠という点では似ているが、「自動介入」の脈絡では質的な違いがあるわけだ。

 まず、「2024年条約」は第4条で「武力侵攻を受けて戦争状態に直面することになる場合、ただちにすべての手段によって、軍事的およびその他の援助を提供する」と明記している。ただし、「国連憲章第51条と北朝鮮とロシアの法に準じて」という前提条件が付いた。1961年条約の自動介入条項と異なる点だ。大統領室高官も「自動軍事介入ではないといえる」と述べた。

 「国連憲章第51条」は、「武力攻撃」を受けた国連加盟国は「個別的または集団的自衛の固有の権利」(個別的・集団的自衛権)を行使できるという条項だ。ただし、加盟国は自衛権の措置を「ただちに安全保障理事会に報告」しなければならず、「安全保障理事会が国際の平和および安全の維持または回復のために必要だと認める行動をいつでもとる」という前提が設けられている。加盟国の自衛権行使を国連安保理が事後調整する権限を明記したのだ。「国連憲章第51条」にともなう自衛権は、北大西洋条約機構(NATO)の「北大西洋条約」第5条(集団安全保障の原則)や、米日安全保障条約第5条などに明記されるなど、国際法が認める権利だ。

 「北朝鮮とロシアの法に準じて」という文言も、韓米相互防衛条約第3条の「各自の憲法上の手続きによって」や、北大西洋条約第11条の「各国の憲法的手続きによって履行」などと同じ脈絡だ。軍事的な自動介入を防ぎ、回避しようとする国際法・国内法的な安全装置だ。問題は、朝ロが自衛権行使を名目に頻発する軍事衝突を阻止しようとする「制御装置」の精神をどれくらい真剣に守ろうとするかだ。

 2024年条約の第4条が「戦時」に備える条項であれば、第3条は戦時ではなく「平時の危機状況」に対応する条項だ。第3条が第4条に先行する。第3条は、「直接的な威嚇がもたらされる場合」に「相互の立場を調整」し、「可能な実践的措置を合意」する目的で「双方の業務交渉通路」を「ただちに稼動させる」と明記している。2000年2月に締結された朝ロ「友好善隣協力条約」の「侵略の危険、平和・安全を脅かす状況で、協議・協力の必要時にただちに接触」するという条項を想起させるが、今度は「双方の業務交渉通路」を明記した点が決定的に違う。

 単に「接触」だけを明記した2000年条約とは違い、危機の状況の際に朝ロの「事前」の「調整」(協議)と「合意」を目的とした「戦略対話」の枠組みを新たに設けて稼動するという制度的アプローチを取っているためだ。冷戦期の朝中ロ3国関係に詳しい前政権高官は20日、ハンギョレに「冷戦期に中ソ両国は、北朝鮮が何の協議もなしに問題を起こして事後収拾を押しつける形態に不満を持ち、『事前戦略対話』を北朝鮮側に要請してきており、中国は今でも北朝鮮側に要請しているが、事前協議の制度化はこれまでなかった」として、「第4条はそのような脈絡からも注視する必要がある」と述べた。

 専門家らは、2024年条約をきっかけに朝ロ関係が事実上の同盟関係に格上げされたとして、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の価値観外交を批判して変化を求めた。

 世宗研究所のキム・ジョンソプ副所長は「同盟は軍事的な相互援助義務を規定することが本質であるので、今後は朝ロ関係も広い意味での同盟とみなすのが適切だろう」と述べた。外交安全保障分野で著名な人物は「朝ロ条約は、尹錫悦政権が強調してきた『価値・包括・戦略な韓米同盟』の『ミラーイメージ』(鏡像)だ」とし、「われわれがまいた種が育ち、われわれの平和と安全保障を脅かすことになった、嘆かわしい状況」だと述べた。前政権高官は「朝ロ関係の包括同盟化によって、尹錫悦政権の『力による平和』政策は、作動するどころか逆効果を生みだしていることが明確になった」とし、「対外戦略の根本的な見直しは避けられない」と述べた。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )