プーチン大統領「ウクライナへの兵器供与は大きな間違い」…危険水域すれすれの韓ロ

AI要約

北朝鮮とロシアが同盟関係を復元し、韓国がウクライナに兵器供与を検討する中、プーチン大統領が警告を発した。

韓国政府は立場を明確にし、駐韓ロシア大使を招いて意思疎通を図る一方、ロシアは反応を見守りながら対応を検討している。

朝ロ条約により朝鮮半島情勢が一変し、韓米日首脳会議に向けて注目が集まっている。

 北朝鮮とロシアが冷戦時代の同盟関係を事実上復元する条約を締結した後、韓国とロシアが「危険なゲーム」に足を踏み入れている。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は20日(現地時間)、ロシアと戦争中のウクライナに韓国が殺傷力のある兵器を供与した場合、「非常に大きな間違い」になるだろうと警告した。大統領室のチャン・ホジン国家安保室長が朝ロの「包括的戦略パートナー関係条約」(朝ロ条約)の締結を「糾弾」し、「ウクライナに対する兵器供与問題を見直す予定」だと発言したことを受け、プーチン大統領が自ら即時対応したものといえる。

 タス通信の報道によると、プーチン大統領はこの日、ベトナムのハノイで北朝鮮とベトナム歴訪を終える記者会見を開き、「殺傷力のある兵器をウクライナ戦闘区域に送ることに関しては、それは非常に大きな間違いになるだろう」とし、「そのようなことが起きれば、われわれは相応の決定を下す。それはおそらく韓国の現指導部が快く思わない決定であろう」と述べた。

 朝ロ条約以後、韓国政府が「ウクライナに殺傷力のある兵器を供与しない」という従来の方針を変えることがあり得るとしたことで、朝鮮半島情勢の焦点は今や韓ロ間の危険な外交戦へと移った。

 プーチン大統領の発言について、大統領室は21日、「兵器供与には様々な案が考慮される可能性があり、昨日(20日)に示した立場に今後ロシア側がどのように対応してくるかによって(兵器供与を)検討していく」という反応を示した。「ウクライナへの殺傷力のある兵器供与」という強気なカードを取り出したが、ロシアのその後の反応を見守ってから対応を決めるという意味とみられる。大統領室関係者は「(政府が)『兵器供与をしない方針を見直す予定』だと発言したのは、ロシアの反応を見て、またロシアの説明を聞く過程を経た後に判断するという意味」だと述べた。「ウクライナへの兵器供与をめぐる方針の見直し」カードはロシアにそれ以上一線を越えるなという警告と圧迫の意味といえる。

 ひとまず韓ロの初の「意思疎通」はこの日、外交部の駐韓ロシア大使の招致を通じて行われた。キム・ホンギュン外交部第1次官は21日午後2時、ゲオルギ・ジノビエフ駐韓ロシア大使をソウル外交部庁舎に呼び、朝ロが新条約を締結し、相互軍事・経済的協力の強化を目指していくことに対する韓国政府の立場を伝えた。キム次官は約30分間行われたこの日の会談で、国連安全保障理事会(安保理)常任理事国であるロシアが、安保理決議を破って北朝鮮を支援することで韓国の安保に危害を加えるのは、韓ロ関係にも否定的な影響を及ぼすという点を明確に指摘し、ロシアに責任をもって行動することを求めた。外交部が明らかにした。駐韓ロシア大使館のソーシャルメディアへの投稿によると、ジノビエフ大使はこの場で、「ロシア連邦に対する威嚇と脅迫の試みは容認できない」とし、「ロシアと北朝鮮の協力は第三国を狙ったものではない」と述べた。

 プーチン大統領の訪朝と朝ロの同盟関係の復元は、冷戦後一歩離れていたロシアが朝鮮半島の地政学に再び強く介入しようとするシグナルだ。プーチン大統領は、米国に対抗するために北朝鮮をカードに活用し、北朝鮮製の砲弾と武器でウクライナ戦争を有利に終わらせようとしている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は核・ミサイルを高度化し、「新冷戦構図」で北朝鮮の戦略的価値を高めようとしている。彼らの戦略的利害関係が合致し、朝鮮半島で大国間のパワーゲームが一層複雑になった。

 朝鮮半島情勢は、朝ロの兵器取引と新条約を通じてウクライナ情勢とも大きく絡み合うことになった。さらに、韓国政府がウクライナに対する殺傷力のある兵器または対空兵器などの供与に乗り出す場合、韓国がウクライナ戦争の真っ只中に巻き込まれる危険な情勢に変わる恐れがある。

 これと関連し、7月9~10日に米ワシントンで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が注目される。同会議には韓国も招待国として出席する予定で、韓米日首脳会議も開かれる。昨年の米国の「韓米日キャンプデービッド首脳会議」に続き、3カ国の安保協力のレベルを高める合意が出る可能性が高い。特に米国は韓国政府が「ウクライナへの兵器供与をめぐる方針の見直し」の意思を明らかにしたことを機に、「韓国はウクライナへの兵器供与を増やすべき」という要求を強化する可能性が高い。米国務省のマシュー・ミラー報道官は20日、「我々はウクライナがロシアの攻撃を相手に戦う上でどんな支援でも歓迎するが、それは最終的に韓国が決定する問題」だと述べた。

 朝ロの同盟条約は、確かに韓国にとって大きな戦略的負担になる。北朝鮮の金正恩国務委員長が安保理常任理事国のロシアという「後ろ盾」を信じて制裁を形骸化させ、韓国に対する挑発を強める可能性が高くなった。今年11月の米大統領選挙を控え、米次期政府で北朝鮮問題が優先順位に置かれるよう、7回目の核実験に乗り出すだろうと予想する専門家もいる。

 今韓国にとって最も重要なのは、ロシアの先端技術が北朝鮮に渡るのを防ぐことだ。金正恩委員長にとっては、軍事偵察衛星、原子力潜水艦、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の再突入技術など先端軍事技術の確保が切実だ。ロシアとの密着と新条約に規定された科学技術協力などを通じて、ロシアからこの技術を確保すれば、北朝鮮は核と先端兵器、ロシアの支援をすべて手にすることになり、韓国は大きな脅威にさらされることになる。

 このような状況で、韓国にとってはどのような戦略的外交を稼動できるのか切迫した質問として提起されている。プーチン大統領は20日の記者会見で、平壌(ピョンヤン)で締結した朝ロ条約について、「あの時(1961年)の既存条約とすべてが同じだった。新しいものはない」と述べた。今回の朝ロ条約の第4条である「侵攻を受けた場合、ただちに相互軍事的援助」という条項が、過去の北朝鮮とソ連の同盟条約に規定された自動軍事介入を意味するという点を事実上認めたわけだ。その一方で「条約上、軍事的援助はひとえに侵攻、軍事的攻撃があった時に適用されるため、韓国は心配しなくてもいい」として、韓国を説得しようとする姿も見せた。

 元情報当局者の専門家は「今回の朝ロ条約はウクライナ戦争という特殊な状況から出たもので、北朝鮮の戦略的価値が下がれば条約の意味は弱まる」とし、「ロシアの先端兵器や技術が北朝鮮に移転されないように、圧迫と外交を最大限並行しなければならず、韓ロ関係を取り返しのつかない破綻に追い込んではならない」と語った。または「韓国がウクライナに武器を支援し、ロシアが北朝鮮にさらに多くの軍事技術を提供する悪循環に陥ってはならない」と強調した。

 駐ロシア大使を歴任したウィ・ソンラク議員(共に民主党)は「昨年7月の韓米日キャンプデービッド首脳会談と9月の朝ロ首脳会談以後、政府が朝ロの同盟関係格上げを予想し、水面下でロシアとの外交を進めるべきだった」と指摘した。また「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権がこの1年間、対ロシア外交で失敗した結果、結局朝ロが密着し、条約を結ぶようになった」とし、「これを覆い隠そうと今になってウクライナへの兵器供与カードを取り出し、強硬対応に出たが、効果を期待するのは難しく、韓ロ関係でさらに大きな危機が訪れるだろう」と懸念を示した。

パク・ミンヒ先任記者、イ・スンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )