最多勝目前の巨人・菅野智之、完全復活の秘密 西本聖氏は「新たな菅野が誕生した」と絶賛、同級生・小林誠司とのコンビ復活も安心感に

AI要約

菅野智之が昨季の不振から大逆転し、14勝を挙げ巨人のリーグ優勝を目指す活躍を見せている。

体の軸が強化されたことや自主トレでの努力が好投につながっており、投球フォームの改善が大きな要因となっている。

捕手の小林誠司との信頼関係も復活し、安心感からシンプルな投球スタイルに戻った菅野の成功を支えている。

最多勝目前の巨人・菅野智之、完全復活の秘密 西本聖氏は「新たな菅野が誕生した」と絶賛、同級生・小林誠司とのコンビ復活も安心感に

 大混戦をきわめる今季セ・リーグのペナントレースにおいて、優勝の鍵を握ると熱視線を浴びているのが巨人の12年目投手、菅野智之だ。昨季はキャリアワーストの4勝に終わったこの男の活躍を、誰が予想しただろうか。快投の秘密をレジェンドOBが徹底分析する。

 昨季は自己ワーストの4勝に終わった菅野が別人のようなピッチングを見せている。両リーグ単独トップとなる14勝を挙げ(9月17日現在)、4年ぶりのリーグ優勝へチームをけん引している。

 今年の菅野の活躍については、「ローテの6番目。相手チームのエースと対戦しないのだから勝ち星を稼いで当然」(巨人OB)という声もあったが、広島との首位攻防3連戦の初戦(9月10日)に登板し、勝利投手となってこれを払拭。ヤクルト戦(9月15日)では中4日で連敗を止める好投をみせた。

 好投を続ける菅野に対して「かつてのエース復活ではなく、新たな菅野が誕生した」と評するのは、元巨人エースの西本聖氏だ。西本氏は巨人から中日にトレードされたシーズンに20勝を挙げて復活した過去を持つ。

「投球フォームが大きく改善されたのが最大の要因です。悪かった時は上半身が突っ込んでいました。右足に体重が乗り切らないうちに“イチ、ニ”のテンポで投げるため、左肩の開きが早くなって腕が振り遅れていた。そのため球威も制球力も悪かった。しかし、今年は右足にしっかり体重が乗って、“イチ、ニ、サン”と我慢してから左足を踏み出しています。

 もうひとつ大きかったのは、“悔しさ”を持ったことです。悔しさから生まれたのが“体の軸”で、昨年の成績の不甲斐なさから一念発起して下半身強化に努めたのでしょう」

 1か月超のハワイ自主トレでは、「毎日200メートルダッシュ10本」という走り込みに加え、肩周りや胸郭などの柔軟性や可動域を広げるトレーニングに取り組んだ。握る力と捻る力を鍛えることにも重点を置いた。

「体の軸がしっかりしたことで、トップの形をしっかり作ることができています。タメが生まれて左肩の開きが抑えられ、ボールを上からリリースできるようになった。体重移動もスムーズで、ストレートの威力とキレが増し、持ち球のスライダーやシュートの制球力もよくなりました。特にフォークボールの精度が上がって要所を締めることができる。すべてがいい方向に向かっています」(前出・西本氏)

「同級生の小林誠司との“スガコバ”コンビ復活が大きい」と話すのは阪神で“江夏豊の専属捕手”と呼ばれた辻恭彦氏だ。

「安心感からか、小林の構えたミットに投げようとする菅野に余分な動作がなくなりました。投球がシンプルになったことで、2年連続で沢村賞(2017、2018年)を獲得した頃のピッチングに戻った。私も江夏とバッテリーを組んでいた時代、どうすれば力が発揮できるかを考えてリードし、結果を出すことで江夏も安心して投げ込んできました。小林も同じで、スッと構えるから菅野も迷いなく投げる。そんな信頼関係が構築されています」(辻氏)

 前出・西本氏も、「安心感があるのでしょう。小林が次に何を要求するかわかっているから菅野も首を振ることも少なく、いい投球リズムで投げています」と、2人を組ませた阿部慎之助監督の采配を評価している。

 ペナントレースも大詰めを迎え、完全復活したエースにV奪還が託されている。

取材・文/鵜飼克郎

※週刊ポスト2024年10月4日号