パリ五輪は開幕でも…「全中9競技廃止」にみる“少子化日本”のスポーツ環境 現場のリアルな声は?「地殻変動のはじまり」「強化に影響出る」

AI要約

2027年度以降の全国中学校体育大会の大幅な変革が決定され、一部競技が取りやめられることになった。

少子化や教員の負担軽減を背景に、大会規模を縮小し、経費削減を目指す中、競技団体からさまざまな反応が寄せられている。

競技の減少だけでなく、今後の子どもの数減少を考慮して、残留競技も安泰ではない状況が示唆されている。

パリ五輪は開幕でも…「全中9競技廃止」にみる“少子化日本”のスポーツ環境 現場のリアルな声は?「地殻変動のはじまり」「強化に影響出る」

 運動部活動に情熱を注ぐ日本の中学生が目指す全国中学校体育大会(全中大会)に、大きな変革が訪れる。1979年に始まり、日本中学校体育連盟(中体連)が主催するこの大会で、現在行われている19競技のうち部活動の設置率が原則20%未満の9競技を2027年度以降は取りやめることが決まった。

 元フィギュアスケーターの町田樹さんは毎日新聞に寄稿したコラムの中で、「スポーツ界に激震が走った」と驚きの度合いを表現した。

 概要は次の通りだ。

<2027年度以降も行う競技>

 陸上(駅伝を含む)、バスケットボール、サッカー、軟式野球、バレーボール、ソフトテニス、卓球、バドミントン、ソフトボール女子、柔道、剣道

<2027年度以降は行わない競技>

 水泳、ハンドボール、体操、新体操、ソフトボール男子、相撲、スキー(※スキーは開催地との契約の関係で2029年度まで実施)、スケート、アイスホッケー

 競技が減るだけではない。2027年度以降は1競技3日間以内とし、参加者数と開催経費は30%削減することを目標に掲げる。大会規模を縮小する背景には、歯止めがかからない少子化と、教員の働き方改革推進がある。

 笹川スポーツ財団によると、野球を週1回以上行う10代の推計人口は2001年には117万人だったが、2021年は65万人と半減している。バスケットボールやバレーボールなど、近年人気が高い競技では増加や横ばいの傾向も見られるが、これは珍しいケースだ。少子化の影響で、全体的には習慣的にスポーツをする子どもは減っている。

 中体連は「大会運営に多大な尽力をいただいている教員の負担軽減」という課題は「解決に向けた取り組みが進んでいない」と指摘している。部活動に顧問などで関わる教員の中には、休日返上で働く者も少なくないのが現状だ。

 全中大会の改革が発表された数日後、東京都内にある各競技団体の事務所を訪れると、幹部たちからさまざまな反応があった。日本スケート連盟は「少子化の進行や教員の負担減を考えると、(現行方式のままの)大会の存続は厳しいという苦渋の決断だったと思う。スケートが全中大会から外れるのは本当に残念だが、受け止めざるを得ない」。

 全日本スキー連盟は「正直、すごく困っている。(少子化を含む)大きな潮流は理解しているが、中学生にとって大きなモチベーションになっている大会。競技普及や選手強化に大きな影響が出る」と述べた。

 部活の設置率が男子7%、女子6%と低いハンドボールでは、事務局長から祈りに近いコメントが出た。「1人のスーパースターで変わることもある。野球は大谷翔平選手、卓球は福原愛さんが引っ張ってきたように。ハンドボールも代表をどう強化していくかを考えることが、遠回りのように見えて近道かもしれない」

 厚生労働省によると昨年生まれた子どもの数は約75万8000人(速報値)で、2年前から4万人以上も減った。今後も中長期的な減少が予想されているだけに、全中大会で「残留」する競技の立場も安泰ではない。