選手のフィジカル強化へ、マネージャーが示した14枚のスライド 「普通の体育会」が回し続けるPDCA

AI要約

東京都立大学ラグビー部が東京地区国公立大学体育大会で敗北し、チームに危機感が広がる。

チームはフィジカルの強化を目指し、マネージャーを導入したが、成果が不十分であることが明らかになる。

チームは目標を再確認し、PDCAサイクルを徹底して取り組むことを決定する。

選手のフィジカル強化へ、マネージャーが示した14枚のスライド 「普通の体育会」が回し続けるPDCA

東京都立大学ラグビー部にとって、春のシーズン最大のターゲットは東京地区国公立大学体育大会だ。文字通り、東京近郊の国公立大がトーナメントで頂点を争う。

東京海洋大学との初戦に45-19と快勝した都立大。続く準決勝の相手は東京学芸大学だった。

6月2日。激しい雨が降り注ぐ、アウェーの学芸大グラウンド。2024年のチームにとって、最初のターニングポイントが待ち受けていた。

7-52、完敗。

高校からの経験者、それもかなりのレベルの経験者をそろえた学芸大は、都立大にとって掛け値なしに格上の相手だった。個々の技術や判断力で劣るのは、やむを得ない。ただ、それ以上に、フィジカルの差は深刻だった。密集戦で押し込まれるだけじゃない。はじき飛ばされるように、タックルを外され続けた。

これでは試合にならない。春の最大のターゲットへの挑戦は、尻すぼみの幕切れに終わった。

募る危機感。4年生の選手とマネージャーは話し合った。「一度、ミーティングを開いた方がいいのかも。自分たちがやるべきことについて、みんなで、目線を合わせし直した方がいいのかも」

実は試合前から、下級生も含めたマネージャーたちはミーティングの必要性を感じていた。課題のフィジカルを強化するため、この春から導入した「担当マネージャー制度」。マネージャー1人につき、選手2人の担当を受け持ち、ウェートトレーニングの数値や体重の増減にコミットして進化を促す取り組みだ。1年生が加わって、1人対2人の責任体制は4、5人ほどの班体制に移行していた。

これ、果たして、機能しているのだろうか?

夏合宿、そして秋の関東リーグ戦3部に向け、最初の中間レビューの必要性を感じていた。

その思いに惨敗が重なって、緊急ミーティングは敢行された。

学芸大戦の4日後、6月6日。都立大、南大沢キャンパスの夜。

とある教室に、みんなが集まった。キャプテン中原亮太(4年、湘南)が問いかける。秋のリーグ戦を戦い抜くために、足りないこと。フォワード(FW)はあれとあれ、バックスはこれとこれ。選手目線で課題を列挙して、最後、やっぱり、フィジカル不足に行き着く。

議事進行のバトンを受け取ったのは、岡田彩瑛(4年、立川)。マネージャー16人を束ねる「マネ長」だ。同期の丁野真菜(4年、厚木)、川添彩加(4年、徳島北)と協力して、一晩かけてパワポで練り上げた14枚のスライドを映し出す。

選手たちへの叱咤(しった)激励と、マネージャーたち自身の悔恨に満ちたプレゼンが始まった。

タイトルは、「TMUSCLE」。最初の3文字、T、M、Uは、都立大(Tokyo Metropolitan University)の英語の略称でもある。その3文字に引っかけて、ティーマッスル。選手のフィジカル強化にマネージャーがコミットするこの取り組みを、そう名づけた。

ワーディング、なにげに大切だ。その取り組みをキャッチーな一言に昇華させることができれば、意識が緩みかけた時、いつだって、誰だって、思い出せる。ティーマッスルとつぶやけば、いつでもどこでも、フィジカルの重要性を手っ取り早く再認識できる。

で、ティーマッスル、本当に機能していたのか?

いよいよ、詳細なレビューへ。

そもそも、目的って何だったっけ?

チームの一番の課題であるフィジカルに対して、選手個人に委ねるのではなく、マネージャーも一緒に取り組んで、チーム全体で強化を図る。

担当制度の導入により、選手とマネージャーのコミュニケーションを増やし、チーム力の向上につなげる。

その理想のカタチは?

【Plan】目標値の設定と、その数値に対する具体的なアプローチの検討。

【Do】アプローチの実行と測定値のエクセル記入。

【Check】目標値と測定値の比較、アプローチについての反省、コーチからのアドバイス。

【Action】アプローチと意識の改善、目標値の再設定。

このPDCAに、選手とマネージャーが一緒になって取り組む。

現実は?

【選手】アプローチについて自主的に反省できていない。エクセルへの測定値記入漏れが多い。そうしたルーティンを超える取り組みが少ない。

【マネージャー】選手とのコミュニケーションが少ない。エクセルシートへの記入を促すことだけが目的になっている。数値の変動に対する感度が鈍い。